画像メモリと画像メモリ制御用コンピュータにより、2次元円図形(静止像)をCRT上に呈示し、図形の背景輝度勾配を操作すると、2次元円図形を3次元球体図形へ視覚的に変換することができた。 本研究では、2次元ー3次元変換メカニズムと対比との関係を明らかにするため、背景輝度勾配を独立変数とし、三次元性知覚については、円図形に対する観察者の三段階評定ー球体に見える、やや球体に見える、球体に見えないーによる評定値を従属変数として、三人の観察者について、それぞれ関数型を求めた。背景輝度勾配により、一様な輝度を持つ円図形との間に、勾配に対応して連続輝度差が生ずることから、円図形に生ずる異なる強さの明るさ対比が円図形に陰影効果を与え、立体視を成立させる。例えば、背景輝度勾配により、一様な輝度の円図形で上半分では、背景輝度が円図形の輝度より相対的に低く、下半分では、逆に相対的に高くなることから、円図形の上半分は明るく、下半分は暗く、変化が連続して感じられると同時に、平面円図形は全体として円球と立体的に知覚される。 観察結果から、立体感の成立は、対比効果の強さではなく、平面円図形を取り囲む背景輝度の勾配により生ずる対比の型が要因であることが判明した。すなわち、対比による明暗が対称的に生じている場合に、もっとも強い立体感が生じ、明あるいは暗のいずれかが支配的になり、図形内の明暗の変化の対称性が低下する程、立体感は弱くなり、平面感に移行する。 このことから、立体球面知覚成立の条件として、対比の対称的連続変化が強く示唆される他、さらに、恒常現象の基本である三次元物体知覚認知との関係の重要性が明白となった。
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