研究課題
外国人労働者をめぐる法律問題に対する近年における関心の高まりは目覚ましいものがある。この問題に対するアプロ-チとしては、大きく分けて、外国人労働者の出入国管理のあり方を諸外国との対比において考察するもの、在留外国人労働者の国内法上の管理・義務に関して比較法的な研究を行うもの、さらに外国人労働者をめぐる差別的取り扱いの実態を社会的差別規制の一環として検討するものなどが見られる。本研究においては、これらのアプロ-チを通して、外国人労働者を受け入れるための法制度の整備が、日本ではどの程度遅れているかを具体的に確認、指摘した。第1に、外国人管理の従来のあり方である国籍の有無のみによる区別の妥当性、国籍・永住権等取得の要件の問題が挙げられる。第2に、外国人労働者が国籍によってではなく、雇用上の身分(たとえば、パ-トタイム労働者であるといったこと)によって差別されることに現われているように、わが国の労働関係法が必ずしも外国労働者の存在を予想していないことの問題性が指摘される。第3に、わが国企業における伝統的な取引慣行を前提として展開してきた企業関係法が外国企業や外国人労働者(特に、管理職員の行動や意識)をその規制対象としていることが問題とされている。本研究が取り上げた論点ならびに本研究を通じて収集・分析した各種の研究成果は、必ずしも網羅的かつ完全なものとはいい難いが、外国人・外国企業の流入をめぐる法律問題が包摂する問題の広がりとそれがわが国の法制度に及ぼす影響、さらにはそれによってわが国がせまられことになる従来の制度やその運用の見直しの必要性が、本研究の参加者の分野別に鮮明になったことの意義は大きいと思われる。
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