研究概要 |
病理では、生検・剖検等を通じて多くの材料を入手する機会がある。しかし、その用途は限られており研究材料化には更に検討、工夫を要する。I.生存細胞、II.未固定細胞、III.ホルマリン固定細胞の各条件での病理材料の有効利用について検討を加えた。Iについては培養株化ヌ-ドマウス移植等を検討し、ヒト扁平上皮癌の増殖に胎盤上清が有効であること、肺小細胞癌の増殖はL-cysteine,Transferrin,Bathocuproind disufonate添加培養液が増殖刺激を持ち、特にL-cysteineが重要であること等を明らかにした。一方、GM-CSFが各種癌の増殖刺激能を持つかについて検討を加え、胃癌、乳ガン、肺小細胞癌、非上皮性肉腫等には増殖刺激を持たないことを確認した。IIについては、各種条件の解剖材料からRNA抽出法について検討を加えた。Rupp,Lockerらのプロテイネ-スK/SDS化溶化・塩化リチウム沈澱法の変法が有効であった。さらに、追加検討を行なう必要があった。IIIについては、ホルマリンは精製純化DNAには殆ど変性作用が無いこと、再構成実験や電気的方法によるDNA抽出法での検討から、抽出時の機械的細断化でなく、抽出開始の時点で既に変性が起こっていることを明らかにした。低温固定、還流固定やEDTA添加で変性がブロックされることは、酵素作用、なかでもDNaseの作用が重要であることが示された。また、ホルマリン固定後組織を免疫原にモノクロ-ナル抗体を作製し、胚芽細胞や睾丸腫瘍に特異的抗体の作製を行なった。 以上の如く、各方法に応じて、かなりの成果を挙げることが出来たが、これらの成果のうち細胞株化等の連続・長期に生細胞を自由自在に得るにはなお更なる検討が必要であると思われる。同様にホルマリン固定材料からの遺伝子、蛋白等の長期・連続使用についても更なる検討が必要である。
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