研究概要 |
分離家兎肝細胞膜より脂質を抽出した後、DEAE-Sephadexカラムクロマトグラフィーにより中性脂質および酸性脂質に分画し、前者からはフロリジルカラムクロマトグラフィーにより中性糖脂質を、後者からはアルカリ加水方解により酸性リン脂質を除去して酸性糖脂質を得た。それぞれの糖脂質分画について固相ELISA法により慢性肝疾患々者血清との反応性を検索した。その結果、肝癌患者、特に肝動脈塞栓療法後の肝癌患者血清は中性糖脂質分画と反応し、一方、自己免疫性肝炎患者血清は酸性糖脂質と反応することが明らかとなった。本年度は後者に重点を置き研究をすすめた。すなわち、自己免疫性肝炎患者血清を用いて抗原糖脂質の分離・精製を試みた。酸性糖脂質をイアトロビーズカラムを用いて4つの分画に分け、それぞれについて固相ELISA法により自己免疫性患者血清との反応性をperoxidase標識抗ヒトlgG血清を用いて検索した。その結果、クロロフォルム-メタノール(4:1)で溶出される分画に抗原糖脂質が分離精製され、TLC、Negative ion FAB-MSの結果、本糖脂質はスルファチドであることが明らかとなった。スルファチドとの反応性は血清をスルファチドとインキュベートすることにより消失したが、Galcer,Galca-6-sulfate,cholesteiol-3-sulfateとのインキュベーションでは消失しなかった。これらの事実は自己免疫性肝炎患者がIgG型抗スルファチド抗体を持っていることを示している。本抗体は自己免疫性肝炎、慢性肝炎(活動性)、慢性肝炎(非活動性)、肝硬変、原発性胆汁性肝硬変患者のそれぞれ92.3、6.7、0.0、25.0、57.1%に見出された。本抗体陽性血清より分離されたIgGはdose-dependentにラミニンのスルファチドへの結合を阻害し、この阻害作用は自己免疫性肝炎における肝細胞障害の発現に何らかの関連を有するものと推定される。
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