研究概要 |
私達は昭和63年度・平成1年度の研究によって自己免疫性肝炎患者血清と反応する肝細胞膜糖脂質がスルファチドであること,また自己免疫性肝炎患者血清中には抗スルファチド抗体が高頻度に出現することを明らかにした。本抗体は血清を家兎肝細胞膜とインキュベ-トすることにより吸収される。しかし、家兎肝細胞膜に含まれるスルファチド量から期待されるよりはるかに少量の家兎肝細胞膜で吸収されることから本抗体は家兎肝細胞膜のスルファチド以外の成分とも反応する可能性が考えられた。そこで,種々の硫酸化グリコサミノグリカンを抗体アッセイ系に加え、その抗体活性に及ぼす影響をみた。その結果、ヘパリン,ヘパラン硫酸添加によって抗体活性は減少するのに対し,デルマタン,ケラタン,コンドロイチン硫酸添加によっては抗体活性の減少はなかった。すなわち、スルファチド抗体はヘパリン,ヘパラン硫酸とも交叉反応することが明らかとなった。更に抗スルファチド抗体が肝細胞膜抗体にどの程度寄与しているかを明らかにするために血清をスルファチドとインキュベ-トした後、スルファチド,家兎肝細胞膜、ラット肝細胞との反応性を検討した。スルファチドとの反応性は68.7%減少に対し、ラット肝細胞,家兎肝細胞膜との反応性はそれぞれ25.5%,14.8%減少した。すなわち、肝細胞膜抗体の20〜40%がスルファチド抗体に由来すると推定された。つづいて、抗スルファチド抗体の細胞障害性について検討した。ラット肝細胞に対しては抗体のみでは障害性は明らかではなかった。一方、本抗体が交叉反応を示すヘパリンは血管内皮細胞表面に豊富に存在することが知られている。そこで、抗スルファチド抗体陽性血清IgGのウシ血管内皮細胞に対する影響をみたところ,IgGはdosedependentに内皮細胞の増殖を阻害した。
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