研究課題/領域番号 |
63480254
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研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
久保 敦司 慶應義塾大学, 医学部, 助教授 (90051771)
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研究分担者 |
中村 佳代子 慶應義塾大学, 医学部, 専任講師 (20124480)
小平 進 慶應義塾大学, 医学部, 専任講師 (00110015)
橋本 省三 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (40050348)
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キーワード | モノクロ-ナル抗体 / RI標識 / 薬理動態 / インタ-フェロン / 大腸癌 / CEA / 鉄剤 / 鉄キレ-ト剤 |
研究概要 |
本研究はRIにて標識した抗体の生体内薬理動態が個々の腫瘍によって、また、治療の経過に沿ってどう変化するを明瞭にする事を目的としている。今年度は、前年度に大腸癌の患者に投与した抗体(抗CEA抗体)をInー111にて標識し、ヒト胃癌(MKNー45、CEAを分泌する)を植え付けたヌ-ドマウスに投与する系を用いて、前年度に明らかになった問題点の解決を試みるとともに、いくつかの新しい知見を得た。Inー111標識抗体を投与した場合、肝臓への非特異的集積が高く、そのため、肝転移巣を描画する事が難しい。Inー111が鉄と類似した生体内挙動をとることを考慮し、肝臓へのInー111集積を低下させる手段として鉄剤、鉄キレ-ト剤の併用投与を検討した。腫瘍を植え付けていない正常のマウスと比較した結果、(1)鉄剤の投与は正常マウスの肝、脾臓へのInー111取り込みを低下させたが、担癌マウスでは効果がなかった。(2)鉄キレ-ト剤は正常マウスの生体内分布に影響を与えなかったが、担癌マウスの血中のInー111量を低下させた。Inー111の生体内動態は正常と担癌マウスとで異なっていることが示唆され,結果的に、鉄キレ-ト剤は腫瘍と血液との放射能(Inー111)比を増加はさせるが、肝臓への取り込みを低下させるためには、より強力なキレ-ト剤を必要とした。前年度に一部報告したように、BRM製剤の一つ、インタ-フェロンは腫瘍細胞表面の抗原の発現を増加させ、その結果、インタ-フェロンの併用投与は標識抗体の腫瘍への集積を5倍に上昇させた。インタ-フェロンの投与方法は血中への抗原の分泌量にも影響し、長期の、あるいは、前もってのインタ-フェロン投与は、かえって肝臓などへの非特異的集積を増加させた。インタ-フェロンの投与計画を詳細に検討し、標識抗体をインタ-フェロンと同時に投与し、投与期間を短縮することで、Inー111の血中クリアランスを早め、肝、脾臓への集積を低下させるレジメを確立した。以上の結果より、併用する治療薬やキレ-ト剤は標識抗体の薬理動態を大きく左右し、特に、正常と担癌マウスとでその影響が異なることから、それぞれのファクタ-は非常に慎重に考慮しなければならないことが明示された。
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