研究課題/領域番号 |
63480283
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
水戸 廸郎 旭川医科大学, 医学部, 教授 (60000981)
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研究分担者 |
河野 透 旭川医科大学, 医学部, 助手 (60215192)
草野 満夫 旭川医科大学, 医学部, 講師 (70091569)
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キーワード | 生体制御機構 / 肝再生 / 迷走神経肝臓枝 / 迷走神経背側核 / 視床下部外側野 / 神経標識物質 / モノアミン / マイクロダイアリシス法 |
研究概要 |
肝障害時の代償修復現象である肝再生は各種生体反応系の有機的連関により支配されている。このうち再生の「始動認識」には中枢神経系の関与が重視されているものの、この研究に関する報告は皆無に等しい。そこで私たちは、組織化学的手法及び電気生理学的手法を用いて中枢神経系の肝制御細胞を同定した。また肝切除後の門脈系臓器の神経活動を解析し、肝再生における神経性因子と体液性因子の関連についても検索した。 1.Wister系Ratの迷走神経肝臓枝切断端中枢側にHRP(Horseradish Peroxidase)を取り込ませ、その後延髄左側迷走神経背側核に多数の標識細胞を同定した。さらに標識能力の高いWGA(Wheat Germ Agglutinin)-HRPを用いた同様の実験では、両側視床下部外側野に標識細胞を認めた。2.迷走神経肝臓枝及び視床下部外側野の微小電気刺激に応じ、延髄左側迷走神経背側核において誘発電位が導出・記録された。また肝再生を惹起する肝切除後、延髄左側迷走神経背側核内の神経細胞の自発電位発射頻度は、その切除量に応じて増大する。しかもこの時、膵臓・小腸支配の神経細胞の自発発射頻度にも増加が認められた。3.迷走神経肝臓枝及び膵臓枝にそれぞれ赤色・緑色の特殊蛍光標識物質を取り込ませた結果、背側核内で両者のシナプス接合が確認された。4.Microdia lysis法により肝部分切除後早期における視床下部モノアミン代謝を解析した結果、神経伝達物質であるセロトニンの代謝の亢進が認められた。5.以上今回の研究により、肝臓と延髄背側核、背側核と視床下部にそれぞれ独立した閉鎖神経回路網が存在し、肝再生の始動及び再生量の調節に重要な役割をもつことが考えられた。また背側核内での肝臓由来神経細胞と膵臓由来神経細胞の連関は、肝再生時の神経性因子と体液性因子の接点になる事象といえ、今後各種生体反応系を解析するうえで神経伝達物質の動態とともに重要な研究課題といえる。
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