研究概要 |
1.山本考案の3-panel runway装置を用いて、ラットの作業記憶についての新しい研究方法を確立した。この方法で薬物投与や脳虚血処置により惹起される実験的健忘に対するS-adenosyl-L-methionine(SAM)ならびにcholinesterase阻害薬であるtetrahydroaminoacridine(THA)およびphysostigmineの作用を検討した。(1)scopolamine0.32-1.0mg/kgの腹腔内投与(i.p.)によりrunway課題のerror(通過不可能なpanelを押した回数)ならびにlatency(start boxを出てgoal boxの餌をとるまでの時間)は用量依存的に増加した。このerrorの増加はTHA1.0-10mg/kgの経口投与(p.o.)およびphysostigmine0.1-0.32mg/kg,i.p.により有意に抑制された。しかし、SAM32-0.32mg/kg,i.p.は何らの作用も示さなかった。(2)PulsinelliとBrierleyの方法で脳虚血処置を行った結果、虚血時間(2〜10分)に依存したrunway課題のerrorおよびlatencyの増加が認められた。5分間の脳虚血により惹起されるerrorの増加(21.2±1.6回)はSAM100-180mg/kgを血流再開直後とその24時間後のrunway test30分前にi.p.投与することにより著明に抑制された。THA3.2mg/kg,p.o.およびphysostigmine0.1mg/kg,i.p.も同様の改善作用を示した。SAM180mg/kg,i.p.の改善作用は血流再開直後のみの投与でもみられたが、runway test前の1回投与では認められなかった。 2.マウス、ラット、ハムスターの回転かご運動量を連続記録し、そのサーカディアンリズムに対する薬物の作用を検討した結果、睡眠薬やコリン作動薬はこのリズムの位相を変えうることが明らかになった。また24ヶ月の老齢ラットでは夜間の運動量が低下しているが、明暗条件下では外界の光同調に異常は認められなかった。ひき続き老齢ラットの運動量の日内リズムに対する抗痴呆薬の作用につき検討中である。
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