研究課題/領域番号 |
63510029
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
増成 隆士 筑波大学, 現代語・現代文化学系, 助教授 (60011376)
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研究分担者 |
五十嵐 一 筑波大学, 現代語・現代文化学系, 助教授 (90193169)
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キーワード | 「体制」としての言語 / ことばによる、知の「整形」 / 映像による哲学 / 映像的文体 / presence感覚とabsence感覚 / 神秘主義 / ス-フィ-旋舞 / 預言の言語構造 |
研究概要 |
(1)ことばを以て明晰に語ることが知の基本であるというのは、いわば、ひとつの「知のイデオロギ-」であり、その明らかな源泉は古代ギリシアにある。そして、この流れに、カトリック教会が「権威がことばに化身する」というもうひとつのイデオロギ-を合流させた。西洋的な哲学は、結局、カモフラ-ジュされた或る種の神学である。こうして、神学の中心的な仕事が聖書解釈であったように、哲学の中心的な仕事は、時代が下るにつれて、先行の権威ある言説の解釈となった。このような過程を通して、哲学の思考そのものがことばによっていわば整形されてくる。美学は、哲学たらんとして、哲学がはらんだ上記の問題に対して鋭い批判をおこなうことをためらってきた。しかし、感性的認識をことばによって「整形」したり、ことばないし言語的論理に従属させるのでなく、感性的認識固有のありかた、そしてそれに対応した知の次元がありうる。このことを試作映像と論文とによって提示した。(←増成) (2)presence感覚とabsence感覚とが渾然一体となった、創造力を秘めた原初的存在状態のイマ-ジュの意味などについて、エクリチュ-ルの具体例を解析した。(←五十嵐) (3)一つの伝統や思想がイマ-ジュやフォルムに具体化した例としてイスラ-ムに注目し、これを現代に蘇生させ、新しい可能性を探る意味で、聖喜劇“エマ-ム"を創作上演した。イスラ-ムは視聴覚的に特に固有のフォルムとイマ-ジュを有してきた。このことを、視覚的イマ-ジュとしていくつかの舞い(ス-フィ-の旋舞、ベリ-・ダンス、ペルシア古典舞踊)と聴覚的イマ-ジュとしての預言の言語構造との両局面で“エマ-ム"に作品化することを試みた。この試みは上演という結果においてのみならず、制作過程においても、研究上重要な意味を持つものであった(cf.聖喜劇“エマ-ム"プログラム)。(←五十嵐)
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