研究概要 |
平成1年度の研究成果は以下の通りである。 (1)メタステ-ブル原子源の開発 昨年度は原子源として冷陰極型を用いていたが,ビ-ム強度が少し弱いこと及び放電の際に生じる共鳴線等によって,質の良いスペクトルを得るには約1時間要していた。本年度はノズル型の原子源を新たに製作してビ-ムの強度及び質の向上を図った。He^*(2^3S)の場合,2×10^<14>個/sr・sの強度(従来の約10倍)が得られ,測定時間も数分に短縮することができた。 (2)グラファイト表面について 2次元物質の典型例であるグラファイトを試料に選び,この表面と希ガスのメタステ-ブル原子の相互作用について研究をおこなった。電子スペクトルの測定及び解析のほとんどは昨年度に終えたが,本年度は論文にまとめて公表した。 (3)Si単結晶表面について Si(111)7×7及びSi(100)2×1を試料としてメタステ-ブル原子電子スペクトル(MAES)を測定した。その結果,(i)メタステ-ブル原子(He^*,Ne^*,Ar^*)はいずれの表面でも共鳴イオン化,続いてオ-ジェ中和の2段階を経て脱励起する,(ii)オ-ジェ中和過程では表面に2個のホ-ルが生成するが,MAESには表面準位に2個のホ-ルをもつ状態が明瞭に観測された。これは電子やX線照射によるオ-ジェスペクトルには見られない初めての成果と言える。(iii)また,表面準位間のホ-ル-ホ-ル相互作用は非常に小さいことがわかった。現在,スペクトルのdeconvolutionを行なうためのプログラムを改良中であるが,完成後には上述の結果を含めて公表する予定である。 (4)他 有機薄膜や気相分子(多体効果)についても実験をおこなった。
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