研究概要 |
1.北海道南西端の松前地方から,系統関係の明らかでない盲目種が発見されたので,その重要性を考慮して予定を変更し,6月末から7月初めにかけてと,8月初めとの2回にわたって現地へ赴き,野外調査を行なった。その結果は論文にまとめて12月に公表したが,この地方の特異性とともに本州との関係を示す重要な証拠のひとつになった。 2.北海道の道北地方からは,これまでにチビゴミムシがまったく記録されていなかったので,国立科学博物館独自の調査計画を延長して現地調査を行ない,合わせて利尻,礼文両島のチビゴミムシ相も再調査した。その成果は次年度に公表する予定であるが,要点だけを述べると,道北地方のチビゴミムシ相は,北海道中央部や東部あるいは南西部のものといちじるしく異なり,西部や利尻島のものにきわめて近いことがわかった。また,この調査によって全国最大の知見の空白がだいたい埋まった。 3.これまでの調査で得られていた資料を検討して,その結果のうちから従来の分布図の空白地域3カ所,四国南東部と西端部,阿武隈山地中央部を取りあげ,4篇の論文にまとめて公表した。このほかに,上記の松前地方の調査結果が公表済みである。 4.中国大陸から初めて見つかった盲目種を研究し,日本のイソチビゴミムシと同様,その近縁種はニュ-ジ-ランドのみから知られていることを突きとめた。西太平洋地域に分布するチビゴミムシ類が,日本のものも含めて,中国大陸から放散したことを示唆する発見で,拡散分化の過程を追究するための重要な手掛りになる。また,この新属新種は,地下生活への形態的適応が,世界中でほかに例のない極限状態に達しているので,その意味でもひじょうに興味深い。それで研究成果を急いで論文にまとめ,専門誌に投稿した。
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