研究概要 |
本研究は、近年のテレーン解析の結果、その存在が明確になりつつある黒瀬皮テレーンについては、その起源を明らかにしようとするものである。そのために、今年度は、先シルル紀基盤岩類およびシルル・デボン系からなる黒瀬川構造帯周辺に特徴的に分布する、含花崗岩質岩礫岩(いわゆる薄衣式礫岩)について、まず、放散虫化石により礫岩層の年代を再検討した上で、そこに含まれる花崗岩質岩礫については、岩石学的研究を進め、黒瀬川構造帯の基盤岩類との類縁関係を検討しようとした。 その結果、以下のような研究成果を得ることができた。 1.愛媛県野村・魚成地域と高知県鳥形山および市,瀬地域を中心に、薄衣式礫岩の年代の再検討した。その結果、黒瀬川テレーンの含花崗岩質岩礫岩には、ペルム系中部統および上部統、トリアス系上部統、ジュラ系下部統および上部統のものが存在することが確認された。それらは、従来考えられていた年代と大巾に違っていたり、年代が異なるものが複数含まれていることが明らかになった。 2.黒瀬川構造帯の花崗岩質岩と花崗質岩礫および流紋岩質岩礫について、蛍光X線によって全岩分析を行なった。多くの岩石が風化変質の影響を受けているが、次の点を指摘できる。 (1)花崗岩質岩礫は、日本の平均的な花崗岩類よりAbに富むことが明らかで、先シルル紀基盤岩類と同様の特徴である。 (2)A-F-Mダイヤグラムでは、花崗岩質礫と流紋岩質岩礫共に、カルク・アルカリ岩系のトレンドにのる。先シルル紀基盤岩類やシルル・デボン系の火山岩類と同様の特徴である。 このように、花崗岩質岩礫は構造帯の基盤岩類から供給された可能性が強い。この点は、現在進行中の、花崗岩質岩礫より抽出したジルコンについてのV-Pb年代測定の結果が出れば、より明確になる。
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