研究概要 |
今年度は特に中・後期ペルム紀における腕足動物区について,北極海域とテ-チス海域の接点に位置する東アジアの状況を重点的に検討した。その結果は以下のように要約される。 中・後期ペルム紀において,東アジアは4つの腕足動物区に分れていた。これは腕足類化石の属単位の地理的分布に基くものであり,それぞれ,Gondwana Tethyan区,Cathaysia Tethyan区,Angara Tethyan区,Cathaysia Tethyan区とAngara Tethyan区の中間区の4区である。後三者の分区は,典型的な北極海域型(冷水型)とテ-チス海域型(温水型)属の含有状況によったものである。即ち,中国北部および北東部などにおいては,テ-チス海域型をわずかに含むが,北極海域型が大部分を占めるのに対し,中国南部や西南日本外帯においては,テ-チス海域型のみで,北極海域型を全く含んでいない。このことは,冷水型は温水型に較べて狭水温性であることを示している。一方,ソビエトの沿海州や,東北日本・西南日本内帯などにおいては,両方の要素をほぼ等分に含むことの外,Horridonia,Licharewia,Paeckelmanel la,Kochiproductusなどの典型的な北極海域型を全く含まないことにより特徴づけられる。これを中間区と呼び,独立させて区別すべきものと考える。これは当時Angara Tethyan区とCathaysia Tethyan区の中間に位置していたものであろう。以上述べた事実は,少くとも東北日本,西南日本内帯については,パシフィカ分裂説が当てはまらないことを意味している。古生物区についての研究成果は,古生物学の分野のみならず,大陸移動やプレ-トテクトニクスの解明にも大いに役立っている。
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