昭和61年北海道大学へ移って以来の予備調査で、小樽市赤岩海岸に著しい酸性変質帯のあることが判明したので、本年度は本研究費補助金により本格的研究を行った。 1.小樽市赤岩の酸性変盾帯は下赤岩山を中心とする、海抜300m程度の珪化岩岩体と、その周辺の海岸によく露出している脈状珪化帯+粘土帯よりなり、原石はいわゆるプロピライトである。プロピライト中には従来知られていた菱沸石・方解石脈のほかトマス石が新たに発見された。 2.海岸の脈状珪化帯+粘土帯は、巾数十m程度のものが、少なくとも5か所以上に存在する。そのすべてに帯状分布の全域が観察されるわけではないが、総合すると下記のような帯状分布が推定される。 3.A:パイロフィライト(ダイヤスポア)-石英帯、B:カオリン(ダイヤスポア)-石英帯、C:セリサイト帯、D:スメクタイト帯、E:緑泥石帯、F:プロピライト。また部分的にアルナイトを含み、1標本からは紅柱石後の仮像を疑わせるものも発見された。 4.ダイヤスポアは、内壁に石英の自形結晶の生成しているポア内に自形結晶として存在し、後期のAlの移動を示している。 5.上記B帯のダイヤスポア中に流体包有物(大きさ10ミクロン程度以下)が見出された。その均質化温度は192-240℃(19測定)であった。 6.パイロフィライト(カオリン)にダイヤスポアを伴うような変質帯は北海道ではこれまで知られていなかったものであり、珪化帯を伴う金鉱床との関連を含めてさらに研究を進める必要がある。
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