ミトコンドリア酵素異常による神経筋疾患の病因解明に関する分子生物学的研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63570374
• 研究機関: 国立精神・神経センター
• 研究代表者: 埜中 征哉 国立精神・神経センター, 神経研究所・微細構造研究部, 部長 (80040210)
• 研究分担者: 菊池 愛子 国立精神, 神経センター神経研究所・微細構造研究部, 研究員 (70159010) ; 相川 久志 国立精神, 神経センター神経研究所・微細構造研究部, 室長 (30184013)
• キーワード: ミトコンドリアミオパチ- / ミトコンドリアDNA / 慢性進行性外眼筋麻痺 / 複合体IV部分欠損 / 神経筋疾患

研究概要

(1)ミトコンドリアミオパチ-におけるミトコンドリアDNA異常
各種のミトコンドリア異常による神経筋疾患を検索し、ミトコンドリアDNA異常を22例の生検筋に認めた。全ての患者は慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)で、他のミトコンドリア異常(例えばMELAS,MERRF)の患者の生検筋内ではミトコンドリアDNAの異常はなかった。CPEOでは検索した33例中22例(66.7%)にミトコンドリアDNAの欠失を認めた。欠失の部位、長さは症例ごとによって異なっていたが、5例では共通の部位に4.9kbの欠失があり、他の報告にみられると同じく、hot spotであった。
(2)ミトコンドリアDNA異常と生化学的、組織化学的異常の関連性
ミトコンドリアDNAに種々の大きさの欠失があるのに22例中生化学的に異常があったのは計4例(2例は複合体I、他の2例は複合体IV欠損)にすぎず、他は正常であった。しかし組織化学的には全例に複合体IVの部分欠損を認め、この所見がミトコンドリアDNA異常と深く関連するのではないかと推定された。そこで組織化学的に欠損した線維の数と、欠失したミトコンドリアDNAの量比を検討したところ、両者に正の相関(r=0.7485,p>0.01)を認めた。
(3)ミトコンドリアDNA異常をもつ筋線維のときほぐし標本による解析
ミトコンドリアDNA異常をもつCPEO患者の生検筋をグルタ-ル固定し、複合体IV活性をみる方法で染色し、ときほぐし標本を作ると、酵素欠損部位は節状(segmental)であることが分った。欠損部の長さを測定し、欠失ミトコンドリアDNA量と比較したところ、異常DNAの多い生検筋ほど、酵素欠損の部が長かった。

研究成果

• [文献書誌] Nonaka I,Koga Y,Ohtaki E,Yamamoto M: "Tissue specificity in cytochrome c oxidase deficient myopathy" Journal of the Neurological Sciences. 92. 193-203 (1989)
• [文献書誌] Nonaka I,Ishiura S,Arahata K,Ishibashi H,Maruyama T,Ii K: "Progression in nemaline myopathy" Acta Neuropathologica. 78. 484-491 (1989)
• [文献書誌] Shimomura C,Nonaka I: "Nemaline myopathy:Comparative histochemistry in the severe neonatal,moderate congenital and adultーonset forms." Pediatric Neurology. 5. 25-31 (1989)
• [文献書誌] Sakuta R,Nonaka I: "Vascular involvement in in mitochondrial myopathy" Annals of Neurology. 25. 594-601 (1989)
• [文献書誌] Yamamoto M,Koga Y,Ohtaki E,Nonaka I: "Focal cytochrome c oxidase deficiency in various neuromuscular diseases" Journal of the Neurological Sciences. 91. 207-213 (1989)
• [文献書誌] Komiyama A,Nonaka I,Hirayama K: "Muscle pathology in MarinescoーSjogren syndrome" Journal of the Neurological Sciences. 89. 103-113 (1989)
• [文献書誌] 桧澤一夫,埜中征哉,小沢えい二郎: "筋病理学" 文光堂, 480 (1989)