本研究の目的は、冠循環とその予備能が病的心においてどのように障害されているかを、カテ先ドプラ-血流計によって計測することであり、その基礎的検討を臨床的に実行し、虚血性心臓病に応用した。 1.臨床における基礎的検討:本法によって、冠血流を臨床的にも計測でき、正常では拡張期優位の血流パタ-ンがみられた。また安全性についても問題がなかった。本法では血流量の絶対値を計測することは困難で、信頼性が低かった。但し血流量の相対的変化を調べるには有用であり、冠予備能の評価は可能と考えられた。本研究では冠拡張薬としてパパベリンを使ったが、効果が直ちに現れ、作用時間が短く、副作用を生ずることなく十分な冠血流増加作用がみられるなど、冠予備能を調べるのに有用と考えられた。造影剤によっても冠血流量は増加したがその作用はパパベリンよりも有意に弱かった。 2.虚血性心臓病への応用:有意の冠狭窄病変をもつ狭心症患者において、pTCA前後に冠予備能を検討した。pTCAによって冠狭窄度は91%から32%へ改善し、冠予備能は1.9から3.9に有意に上昇した。冠狭窄度と冠予備能の間には負の相関が存在した。しかし正常冠動脈でも予備能が低下したり、高度狭窄があっても予備能が正常の例もあり、病的心の冠循環には今後も検討すべき事項が多い。 3.肥大心、弁膜症については現在症例数が少く、まだ結果、結論がでるに至っていない。
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