本研究の目的は、冠循環とその予備能が病的心においてどのように障害されているかを、カテ先ドプラ-血流計によって計測することであり、その基礎的検討を実験的、臨床的に行い、虚血性心臓病に応用した。 1.実験的検討:20MHX_zの超音波振動子を3-5Fカテ-テル先端に装着することにより、電磁流量計との比較においても精度の高い冠動脈血流が得られた。反応性充血では血流速度が平常の3-6倍に増加するが、その範囲においては本法で計測可能であり、冠予備能の測定に有効であることが示された。 2.臨床における基礎的検討:本法によって、冠血流を臨床的にも計測でき、正常では拡張期優位の血流パタ-ンがみられた。また安全性についても問題がなかった。本法では血流の絶対値を計測することは困難で、信頼性に乏しかった。ただし血流の相対的変化を調べるには有用であり、冠予備能の評価は可能と考えられた。本研究では冠拡張薬としてパパベリンを使ったが、効果が直ちに現れ、作用時間が短く、副作用を生ずることなく十分な冠血流増加作用がみられ、有用性が確認された。また造影剤による冠拡張作用も調べたがパパベリンよりも弱かった。 3.虚血性心臓病への応用:有意の冠狭窄病変をもつ狭心症患者において、PTCA前後に冠市備能を検討した。PTCAによって冠狭窄度は91%から32%へと改善し、冠予備能は1.9から3.9に有意に上昇した。冠狭窄度と冠予備能の間には負の相関が存在した。しかし正常冠動脈でも予備能が低下している症例や、高度狭窄があっても予備能が保たれているものもあり、測定上の問題だけでなく、病的心の冠循環には未解決のことが多い。
|