研究概要 |
1.ヒトEGFのRIAによる測定法により以下の成績を得た。 (1)ヒト血中EGF濃度は妊娠によって増加することを発見した。 (2)ヒト臍帯血の分析により,胎児血中もEGFが存在することを明らかにし,母体血中により臍帯血中が低値であり濃度勾配が存在することも発見した。 (3)臍帯血中EGF濃度と児体重との間に正の相関が存在することを見出し,胎児発育とEGFとに関連があることを示唆した。 (4)哺乳中の新生児血中のEGF濃度は,臍帯血中のものより高く,母乳中に高濃度に認められるEGFが,経消化管的に吸収されることが考えられた。 (5)新生児初尿中にEGFは高濃度であり,胎児側の主なるEGF産生源は腎臓であると考えられた。 2.マウス顎下腺切除によるEGF欠乏動物モデルの作制。 (1)マウス顎下腺中には極めて高濃度のEGFが存在することを明らかにし,顎下腺切除手術により,血中EGFが低下することを発見した。これより,マウスでは顎下腺が主たるEGF供給源であり,顎下腺切除により,EGF欠乏動物モデルが作制可能であることを明らかにした。 (2)雄マウスに顎下腺切除手術を施すと,術後3週間で成熟精子数の減少を認め,EGF補充により回復することを明らかにした。さらに精巣中精細胞数の分析より,EGFが促進する精子産生のステップは減数分裂であることをつきとめた。 (3)雄マウスに顎下腺切除手術を実施すると,妊娠は成立するものの流産が多発することを発見した。その原因としては,胎仔の発育不全が存在することを明らかにした。さらに,顎下腺切除群マウスの子宮発育が不良なことから子宮因子によるものが推定された。
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