研究概要 |
1.「鼻茸からの細胞培養」という目標において、血管内皮細胞および繊維芽細胞の系代培養系を確立した。これらの細胞および培養上清からアラキドン酸代謝物をラジオイムノアッセイにより定量可能であり、また、^<14>C-アラキドン酸を用いての酵素活性検索も可能であった。大血管由来の培養血管内皮細胞は、PGI_2の産生能が高いとされているが、本研究の鼻茸由来の培養血管内皮細胞にはPGI_2の酵素活性は比較的低いことが判明し、鼻茸の血管内皮の特徴の一つと考えられた。 2.アラキドン酸代謝物の15-HPETEや12-HPETEは、大血管由来の培養血管内皮細胞の細胞障害性が高いとされている。15-,HPETEの代謝物である15-HETEの鼻茸由来培養血管内皮細胞の増殖に及ぼす影響を検討したが、内皮細胞の増殖の抑制は認められなかった。15-HPETE、12-HPETEの増殖への影響を確認すること、および、^<51>Crラベルの内皮細胞を用いた細胞障害性の検討方法を併用することも必要と考えられる結果であった。鼻茸由来培養血管内皮細胞に対する15-HPETEや12-HPETEの細胞障害性が確認されることは、鼻茸の成因におけるアラキドン酸代謝物の重要な係わりを証明することにつながると考えられる。 3.鼻茸症例の成因を把握するために、慢性副鼻腔炎に合併した鼻茸症例、鼻アレルギ-およびアスピリン喘息に合併した鼻茸症例について、臨床的統計解析を継続しているが、アスピリン喘息に伴う鼻茸症例は昭和63年度の2例に加え、さらに1例追加症例が得られた。その結果、慢性副鼻腔炎に合併した鼻茸と、鼻アレルギ-あるいはアスピリン喘息に併発した鼻茸の組織像の違いが主に好酸球の浸潤の有無に係わっていることが示唆されてきている。また、好酸球浸潤の強さとその鼻茸に対するステロイド剤の効果との間に何らかの関連性が認められるような結果が得られてきている。
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