研究概要 |
歯周病原細菌であるBacteroides gingivalis2株(381株および1021株)の菌体から4%SDSおよびプロナーゼ、トソプシン処理により分離した細胞壁ペプチドグソカンの化学構造と免疫生物活性について検討し、以下の結果を得た。 1.供試したB,gingivalisから分離したペプチドグリカンのアミノ酸組成はGlcN、Nur、Glu、Ala、Azpm=0.71〜0.68:0.52〜0.66:1:1.73〜1.64:1.20〜1.12(Glu当りのモル比)であり、微量構成成分としては、SerとGlyが検出された。 2.検出されたGluは全てD型でありA2pmはneso型であった。またAlaはいずれもD型とL型が同じ比率で認められた。 3.いずれのペプチドグソカンにおいても遊離アミノ基がA2pm残基の約50%に認められた。 4.Cー末端アミノ酸としてAla、A2pmおよびGlyか検出された。 5.1〜4の結果から、B.gingivalisのペプチドグリカンはA2pmであり軸ペプチドは-Ser-Gly-の架橋ペプチドを介して結合されたているものと考えられ、SchleiferとKandler分類のA3rに属するものと推定された。 6.B.gingivalisペプチドグリカンは卵白アルブミンを抗原とした細胞性免疫に対する増強作用を示し、血中抗体産生に対する増強作用は1021株ペプチドグリソンにおいて強く、381株において弱い活性が認められた。 7.BALB/CおよびBALB/Cヌードマウスの脾細胞に対するマイトゲン作用はいずれのペプチドグリカンにおいても認められたが、胸腺細胞に対するマイトゲン作用は認められなかった。 8.B.gingivalisのペプチドグリカンはモルモット腹腔マクロファージの14C-グルコサミン取り込みを指標とした刺激作用を示した。 9.6〜8の結果からB.gingivalisの細胞壁ペプチドグリカンは多彩な免疫調節作用を有していることが明らかになり、それらの活性を介して歯周病の免疫病理学的機序を修飾している可能性が示唆された。
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