研究概要 |
1 シミュレーションで用いる数学的人体モデルの作成,このモデルとしてMIRD模型を利用するが,どんな日本人にも使えるように(1)日本人の体格や臓器の測定値を文献により求め,(2)継続して全身放射能測定を行っている小児から成人までの十余名の被検者について多くの変数を選んで身体計測をくり返し,データを得た。これにより箱型ファントムの大きさ,形にとらわれずに,被検者自身の身体値によるカリウム量の計算がシュミレーションにより可能になった。 2 体内カリウム分布 カリウムは一様に分布していると仮定して作られた同一濃度のカリウム溶液を入れた箱型ファントムで校正を行っているが,これも誤差を大きくする原因の一つであろう。そこで筋肉などのカリウム量を文献で調べた。たとえば胸部では心筋や骨格筋にはカリウムが多く,肺にはほとんど無いので,量と立体的関係をシミュレーションにとり入れれば,精度の向上に大きく貢献するであろう。 3 シミュレーションの目標値となる全身カリウム量の精密測定,わが国での精密測定ができる放医研(千葉市),原研・東海(茨城県東海村),動燃・東海(同),長崎大学(長崎市)で数名がカリウムの測定を受けた。各施設間に大差は見られず,これで目標値が求められた。 4 シミュレーション・コードの整備 (1)上記1で求めた人体モデル中のカリウムからのガンマ線が検出器に入射するまでの挙動を追う三次元モンテカルロ輸送コード並びに (2)このガンマ線に対する検出器のエネルギー応答関数を作成するガンマ線カスケード・モンテカルロ計算コードの整備はほぼ完成した。予定通りシミュレーションにより,被検者と同じ体格とカリウム分布をもち,カリウム量既知のファントムが与えるであろうカウント数と,被検者の実測カウント数とから,性・年齢・体格によらずに正確なカリウム量を求める準備がすべて整った。
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