研究実績の概要 |
平成27年度は、下記の材料系を用いて縦型素子を作製し、スピンポンピングを用いたスピン注入の研究を進めることを予定しており、計画通り研究を進めてきたが、想定外の結果も得られた。(材料系: IV族系: 注入源GeFe, チャネル層Ge or Si, 絶縁体障壁SiO2やMgOなど。III-V族系:注入源GaMnAs, チャネル層 GaAs, 絶縁体障壁AlAsなど。酸化物系:注入源LaSrMnO3, チャネル層 n型La:SrTiO3やSrTiO3/LaAlO32次元電子ガス領域) <本年度の実績>強磁性半導体GeFeの強磁性共鳴を得ることに成功した。強磁性共鳴が発現する磁場強度は磁場印加角度にほとんどよらず、磁気異方性が小さいことが明らかになった。また、ボロンをドーピングすることによって、キャリア濃度を大きく制御できることを明らかにした。ドーピング濃度の増加とともに、強磁性共鳴が強くなる現象を初めて観測した。酸化物分子線エピタキシー法によるLaSrMnO3/SrTiO3構造の作製技術を確立した。製膜した薄膜の表面では原子ステップが観測され、極めて品質の高い薄膜が形成できることを示した。Pt/LaSrMnO3縦型デバイスを作製しスピンポンピングによる起電力を観測することに成功した。 想定外の成果として、筑波大学黒田研究室との共同研究として行っているスピンポンピングを用いたトポロジカル結晶絶縁体SnTeへのFeからのスピン注入に成功した。本研究は縦型デバイスを用いたスピン注入の研究の一環として行った。 また、東京大学物性研究所の勝本研究室との共同研究成果として、強磁性半導体InFeAs上の1ミクロンのギャップを持つNb電極を配置した素子で、InFeAsに対する超伝導近接効果を観測した。三重項ジョセフソン電流を観測できている可能性があり、今後更なる追求が必要である。
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