容器中に閉じ込められたスピン偏極気体原子は,容器表面と衝突することによってスピン緩和を起こす。そのスピン緩和によって容器が機械的に回転することを実証するための装置開発を行った。装置は,回転させる物体を細い線でつった高感度のねじり秤である。このねじり秤の開発のため,光で偏極する気体原子を閉じ込めた容器を用いる前に,有名な「Bethの実験」,すなわち,1/2波長板をつり下げ,入射した円偏光の向き,つまり光子のスピンの向きが逆転する際に光が波長板に及ぼすトルクによる波長板の回転を検出する実験を行った。直径6.6マイクロメートル,長さ1メートルのワイヤーにつられた波長板の振動を抑えるのに苦労したが,波長板に導体を取り付け,印加した磁場中を運動するときに発生する渦電流を用いてブレーキをかける方法で解決することができた。その結果,光から受けるトルクにより生じる波長板の回転を明確に検出することができた。これにより,必要な感度を持ったねじり秤の開発は完了した。
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