公募研究
U(1)量子スピン液体の候補物質である希土類磁性絶縁体Pr2Zr2O7などは、電荷0・スピン1/2を運ぶ分化したボーズ粒子スピノンを、励起エネルギーギャップを持った準粒子として自発的に生じると考えられている。一方、Yb2Ti2O7は、このU(1)量子スピン液体からHiggs閉じ込め強磁性相に相転移した系として知られている。そこでは、スピノンがボーズ凝縮して超伝導体におけるクーパー対のように振る舞うと考えられるため、超伝導におけるジョセフソン効果の磁気的類似現象の発現が期待される。これらは、散逸のない革新的スピン変換・制御機能の理論的発見に直接つながる、きわめて重要な現象である。我々は、Yb2Ti2O7/Pr2Zr2O7/Yb2Ti2O7、及び、Yb2Ti2O7/Yb2Ti2O7/Yb2Ti2O7の薄膜状ナノ接合系の有効スピン理論模型を解析をした。スピン模型の結合定数、および、左右両側のYb2Ti2O7における強磁性磁化の方向やスピノンの位相差などの境界条件を変化させながら、接合系のスピン構造、スピノン凝縮成分の空間分布と位相分布、接合を流れる局所スピノン流などを計算した。その結果、Yb2Ti2O7/Yb2Ti2O7/Yb2Ti2O7接合系では、左右両側のスピノンの位相差に比例してスピノンのsupercurrentが増大し、接合の厚さによらず内部であまり減衰しないことを示した。Yb2Ti2O7/Pr2Zr2O7/Yb2Ti2O7接合系では、スピノンの位相差について、2π、4π、6π周期のサイン関数を成分にもつスピノン流が発生し、その強度は接合の厚みとともに減衰することを示した。スピノンは磁化のモノポールを運ぶことから、この場合には、縦スピン流と、接合の両側のスピノンの位相差の間に一般化されたジョセフソンの関係式が成立することがわかった。本成果について論文投稿準備中である。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Physical Review Letters
巻: 116 ページ: 2177201/1-6
10.1103/PhysRevLett.116.217201