研究実績の概要 |
代表者のグループでは最近、会合状態においても高い蛍光特性を示すベンゾチアジアゾール(BTD)色素とジアリールエテンを連結した蛍光性ジアリールエテンが、ナノ粒子の状態において顕著な非線形蛍光スイッチング挙動を示すことを見出している(Angew. Chem. Int. Ed., 2016, 55, 3662-3666; "Hot paper"および"inside back cover"に選出)。 平成27年度の研究では、非線形蛍光スイッチング機構の詳細な理解を得るために、ナノ粒子中における分子配列を評価し、蛍光消光効率に対する理論的な解析を試みた。その結果、XRD測定からナノ粒子中において分子はランダムな配置をとっているアモルファス状態であることが明らかとなり、理論解析の結果から分子間の長距離エネルギー移動の機構で観測された非線形蛍光スイッチング挙動を十分説明できることが明らかとなった。 さらに、非線形蛍光スイッチング挙動を示す蛍光性フォトクロミックナノ粒子の有用性を拡張するために、蛍光色の異なる種々の蛍光色素と着色体の色(吸収波長)の異なるいくつかのスイッチングユニットを連結させ、それらが系中に同時に存在する中で、目的とする蛍光色へと光選択的にスイッチングできる多色蛍光スイッチングの実現に取り組んだ。これまでに赤色の蛍光を示す色素に青く着色するジアリールエテンを連結させた分子と、緑色の蛍光を示す色素に赤く着色するジアリールエテンを連結させた分子を合成し、それらの分子がナノ粒子の状態で高い蛍光特性と顕著な非線形蛍光スイッチング挙動を示すことを確認した。さらに、それらを混合した系において、照射する光の波長条件により選択的に蛍光色をスイッチングできることを明らかとした。
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