研究領域 | 高次複合光応答分子システムの開拓と学理の構築 |
研究課題/領域番号 |
15H01077
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐田 和己 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80225911)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 光二量化 / 相分離 / 高分子溶液 / LCST / アントラセン / エフェクター |
研究実績の概要 |
光によって高分子の形態が大きく変化する光応答性高分子はこれまで主に温度応答性高分子と光反応性の化合物を化学結合することによって設計・合成されてきた。新しい光応答性高分子の設計として、本研究では、光反応性の低分子(エフェクターと呼ぶ。)を柔軟な高分子と相互作用させることにより、エフェクターの光反応によって高分子の形態・溶解性を変化させることについて検討を行った。 まず最初にピレン官能基をもつアクリル系高分子(PPMA)を合成し、アントラセンを持つエフェクター分子(ANT2)と電荷移動錯体の形成を利用し溶解させ、低分子の光反応による高分子の相分離の誘起を考えた。しかしながら、この誘導体の可溶化能が乏しく、十分な濃度の高分子の可溶化が達成できなかった。そこで、次に、Cononsolvencyを利用する系を検討した。これは強いアクセプター(NDI1)をエフェクター分子としてPPMAの溶液に共存させ、PPMAの溶解性を向上させた後、そこに第4の成分として、ANT2を加えた。ANT2の光二量化反応を起こさせ、これをトリガーとして、高分子の相分離の誘起を検討した。NDI1共存下でのPPMAの溶解性の向上が見られ、十分な量の高分子溶液が得られ、さらにANT2を加えることで、PPMAの溶解性の低下が見られ、溶液が濁った。さらに、UV照射によって、わずかではあるが、透過度が向上し、ANT2の光反応による相分離が予備的ではあるが誘起できたものと思われる。したがって、低分子の光反応による高分子の相分離に成功したと考えられる。また、この系を応用して、光によるゲルの変形を検討するべく、基礎となる温度応答性ゲルの構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
光反応性部位をもつエフェクターの分子設計として、多くの場合、反応溶媒への溶解性が十分ではないため、エフェクターとしての機能がうまく引き出せていない点が問題であり、今回の結果のような複雑な系になった。さらに、エフェクターおよび高分子の濃度が高く、反応がうまく進行しない点も問題点として挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
アルキル基などの親媒質性官能基の導入をもつ光反応性部位をもつエフェクターの分子設計・合成を進めると同時に、二光子励起により最も吸収の少ない近赤外光の利用等について検討を行う。
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