公募研究
28年度には、レーザー誘起相分離過程に現れる相分離構造の光学活性について、特にアミノ酸などの添加物の効果を調べた。また、レーザー誘起相分離過程にある溶液を反応場として、アントラセンカルボン酸の光二量化反応を誘起し、その生成物の光学活性及び異性体比を調べることで、その不斉合成反応への反応場としての性質について調べた。イソブトキシエタノール-水混合溶液のレーザー誘起相分離過程では光学活性は観測されなかったが、溶質分子として不斉炭素を持つアルギニンやアミノブタノールを加えた溶液では、レーザー照射後100 μ秒程度から光学活性が現れ、500 μ秒程度で最大となった。時間分解光散乱法によって相サイズを調べた結果から、100 μ秒程度かけて相や界面が形成され、その後は形成した相が徐々にそのサイズを成長させる様に相分離過程が進むことがわかった。このことから、光学活性が観測された時間はそれぞれの相や界面が形成した時間であることがわかった。また、溶質分子をトリプトファンやイソロイシンとした場合には、過渡的な光学活性はほとんど観測されなかった。これは、相分離後のそれぞれの相へのアミノ酸分子の溶解度の差や相分離温度の変化が原因であると考えられる。アントラセンカルボン酸の光二量化反応は、近赤外光レーザーパルス照射によって相分離を誘起したのち、一定の遅延時間をおいて紫外光パルスを照射することによって、相分離過程にある溶液中での二量化反応を誘起した。溶液中に不斉炭素を含まない時には生成物の光学活性は現れなかったが、溶質分子としてアミノブタノールを添加することによって、生成物のCDスペクトルが変化し、光学活性が現れた。CDスペクトルは赤外光パルスと紫外光パルスの遅延時間によって変化したことから、相分離構造によって、反応場としての性質が変化し、生成物の光学活性に影響を与えることがわかった。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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