研究領域 | 高次複合光応答分子システムの開拓と学理の構築 |
研究課題/領域番号 |
15H01082
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鳥本 司 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60271029)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 半導体ナノ粒子 / 量子ドット / 多数励起子生成 / 低毒性ナノ粒子 / 多元半導体 |
研究実績の概要 |
半導体ナノ粒子では、高エネルギー光子の吸収により生じるホットキャリアが最低励起準位に失活する際に放出される余剰エネルギーによって、多数励起子生成が比較的容易に生じるために、光エネルギー変換デバイスに応用する研究が活発に行われている。本研究では、I-III-VI2族およびその固溶体からなる様々な半導体ナノ粒子を合成し、その特異な光化学特性を利用する新規光反応の開発を目指す。本年度は、ZnTe-AgInS2固溶体((AgIn)xZn2(1-x)S2, ZAIS)およびZnTe-AgInTe2固溶体((AgIn)xZn2(1-x)Te2, ZAITe)ナノ粒子を対象とし、ナノ粒子のサイズ・組成が電子エネルギー構造および光化学特性に及ぼす影響を評価した。 金属酢酸塩とカルコゲナイド化合物を前駆体として用い、表面修飾剤としてドデカンチオールを含む有機溶媒中で熱分解してナノ粒子を得た。いずれの固溶体ナノ粒子においても、粒子の固溶体組成xは、金属元素の仕込み比により制御することができた。ZAISおよびZAITe粒子の吸収スペクトルは、粒子組成xの減少とともに短波長シフトしたことから、粒子のエネルギーギャップ(Eg)が固溶体組成制御によって、近赤外~紫外光領域の間で自在に制御できることがわかった。特に、ZAITeナノ粒子は、近赤外領域にEg(1.2~1.6 eV)をもち、可視光照射による多数励起子生成に適したものであった。大気中光電子分光収率測定により、球状ZAISナノ粒子(粒径:約5 nm)およびロッド状ZAITeナノ粒子(ロッド幅:約4 nm)の伝導帯下端(ECB)および価電子帯上端(EVB)の電位を求めた。いずれの粒子でも、x値が減少してEgが増大すると、ECBがより負電位に、EVBがより正電位にシフトすることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標である、ZnTe-AgInS2固溶体((AgIn)xZn2(1-x)S2, ZAIS)およびZnTe-AgInTe2固溶体((AgIn)xZn2(1-x)Te2, ZAITe)ナノ粒子の合成法を確立し、それらの粒子のサイズ・組成が電子エネルギー構造および光化学特性に及ぼす影響を詳細に評価することができた。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度の成果を発展させるとともに、以下の項目を実施する。 (1)近赤外光領域で光応答する低毒性量子ドットのさらなる開発 (2)多数励起子生成により生じる複数励起子による多電子1段階移動による光クロミズム
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