研究領域 | 高次複合光応答分子システムの開拓と学理の構築 |
研究課題/領域番号 |
15H01096
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
森本 正和 立教大学, 理学部, 准教授 (70447126)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | フォトクロミズム / ジアリールエテン / 超分子化学 / 光スイッチ / 1分子計測 |
研究実績の概要 |
蛍光スイッチングジアリールエテンを基本骨格として用いて、超解像顕微鏡用の蛍光プローブ分子に適用できる蛍光スイッチング分子システムを創出することを目的としている。可視光応答性や水溶性の付与、ならびに光反応量子収率の制御のための分子設計を検討し、合成した分子の光応答挙動を観測した。 超解像バイオイメージングにおいては、観察対象の損傷を防ぐために、紫外光ではなく可視光の照射により蛍光活性化できる分子が求められる。蛍光スイッチングジアリールエテンの開環体の吸収帯を長波長化し、可視光応答性を付与することを目指して、中央部位にジシアノエテンを有する分子を合成した。この分子の開環体の吸収端は460 nm付近までのびており、405 nm光の照射により閉環反応が起こり、蛍光性の閉環体が生成した。閉環体は緑色の蛍光を示し、蛍光量子収率は1,4-ジオキサン中において0.78であった。中央部位の化学修飾が可視光応答性の付与において有効であることが分かった。 水溶性の付与のために、親水性置換基としてイノシトールを有するジアリールエテンを合成した。この分子は水に溶解し、水中で可逆的なフォトクロミズムと蛍光スイッチングを示した。 これまでに複数種類提案されている超解像顕微鏡に幅広く対応するためには、蛍光スイッチングジアリールエテンの光反応性を合理的に制御するための設計指針が求められる。光反応量子収率に対する置換基効果を検討した結果、ジアリールエテンの末端アリール基に置換基を導入して分子の平面性を制御することで、蛍光量子収率を大きく低下させることなく、開環反応量子収率を増大できることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
物質合成や合成した分子の光応答挙動の評価については、特に問題なく遂行できており、蛍光スイッチングジアリールエテンを超解像顕微鏡用の蛍光プローブ分子として応用するために必要な、可視光応答性・水溶性・光反応量子収率などに関する分子設計指針を明らかにしつつある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得た知見を新しい分子設計へとフィードバックし、分子構造と光反応性・蛍光特性との相関を明らかにしながら、蛍光スイッチングジアリールエテンの機能向上を図る。また、本研究で提案する新しい複合光励起法の光化学反応における有効性を検討し、この光励起法を用いたジアリールエテンの蛍光スイッチング挙動の制御を試みる。
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