研究領域 | ゆらぎと構造の協奏:非平衡系における普遍法則の確立 |
研究課題/領域番号 |
16H00809
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
藤原 慶 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (20580989)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 合成生物学 / 自己組織化 / 反応拡散系 / 人工細胞 / ソフトマター |
研究実績の概要 |
バクテリアの細胞分裂面の起点はMinタンパク質の反応拡散波により決定される。この波はバルク系では再現可能であるが、細胞サイズ閉鎖空間では再現できないことが知られていた。しかし申請者らはごく最近、特定の高分子を一定量添加することで、閉鎖系においてもこの波を再現できる条件を見出した。このことは細胞がバルク系とは異なる反応拡散系により制御されていることを意味するが、その物理は未解明である。そこで、人工細胞内でのMin波再現系をモデルとして用い、生命に適用可能な閉鎖系における反応拡散系と構造形成の物理を導くことを目的とした。本年度は、細胞サイズ空間に内包した条件において反応拡散波を発生させるための条件を解明すべく研究を展開した。そのために①イオン環境や分子濃度が波の発生に与える影響の解析、②波発生の初期状態の解析を行った。 ①のイオン環境に関しては、細胞空間に細胞空間が反応拡散により生じる波に対してイオン環境に対する頑健性を与えるという新規な現象の存在を示唆した。 ②の波発生の初期状態においては1つの波のみが生じるサイズの液滴においては興味深い現象が観察された。まず膜上と細胞質部分の間をMinタンパク質が一様振動し、その後に極間を往復するstanding waveが発生、最後にtraveling waveと変化することが明らかになった。このような波の種類の遷移は因子の混合後20分程度で完結した。この現象は、1時間後の観察においては90%程度の油中水滴においてtraveling waveが観察された理由を説明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初想定していた内容は全て達成できた。その過程において、非常に興味深い物理現象を見出すに至った。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き空間のサイズがMin波の性質に与える影響について解析する。また、理論研究と照らし合わせ、反応拡散波が細胞サイズ閉鎖空間において見せる特徴を明らかにする。
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