公募研究
我々は、直鎖状ユビキチン鎖を特異的に生成するユビキチンリガーゼ(LUBAC)を同定し、LUBACが炎症・免疫シグナル(NF-κB経路)制御に必須であることを見出した。さらに最近我々は、optineurin(OPTN)が直鎖状ユビキチン鎖に特異的に結合することをX線結晶構造解析によって解明し、OPTN-KO細胞を作製してNF-κBシグナルや細胞死制御における機能を明らかにした。また、筋萎縮性側索硬化症(ALS)発症における直鎖状ユビキチン鎖の寄与を病理染色によって明らかにした。ごく最近、OPTNはNDP52とともにmitophagy制御に必須であることが報告され、PINK1によるユビキチンのリン酸化、TBK1によるOPTNのリン酸化、parkinのE3活性等がmitophagy制御に密接に関わることが示唆されている。しかし、LUBAC、リン酸化直鎖状ユビキチン鎖、リン酸化OPTNがどの様にmitophagyを制御し、どの脱ユビキチン化酵素によってmitophagyの抑制が司られるか全くわかっていない。そこで本研究では、領域研究者と有機的に連携することで、LUBAC、直鎖状ユビキチン鎖、OPTNを中心にして、ユビキチン化やリン酸化などの翻訳後修飾のmitophagyにおける役割を明らかにすることを目指す。さらに、mitophagy制御に関わる脱ユビキチン化酵素を生化学、細胞生物学的に同定・解析するとともに、その阻害剤探索から創薬シーズへの展開を目指す。また、ALSなど神経変性疾患発症におけるOPTNやmitophagyの寄与を解明する。今年度の研究成果として、OPTNの生理機能やALSとの連関について報告した(Nakazawa S. et al., Nat. Commun., 2016)。
2: おおむね順調に進展している
mitophagyに関わるLC3結合性アダプタータンパク質としてはOPTNとNDP52が主要であり、TAX1BP1やp62が補助的な役割を果たすこと、parkinはmitophagy活性を増強するが本質的にはOPTNとNDP52が相補的な役割を果たすこと、OPTNのユビキチン結合ドメイン(UBANドメイン)はmitophagy活性に必須であることが明らかになってきた。興味深いことに、脳ではOPTNの発現レベルは高いが、NDP52の発現レベルは低いことも示されている。我々は、OPTNのUBANドメインは直鎖状ユビキチン鎖に特異的に結合することをX線結晶構造解析から詳細に解明した。また、OPTN-KO HeLa細胞ではNF-κB活性とアポトーシスが亢進すること、OPTN欠損ALS患者細胞では直鎖状ユビキチン鎖が封入体内に蓄積し、カスパーゼ3活性化が亢進することを見出した(Nakazawa S. et al., Nat. Commun., 2016)。また我々は、xenophagyにおけるOPTNの役割を予備的に調べるため、OPTN-KO HeLa細胞にてビーズトランスフェクションによるLC3-II産生を解析したが、有意な差はなかった。さらに、我々はNDP52の単独又はOPTNとの二重ノックアウト細胞を構築し、NDP52もNF-κBとアポトーシス制御に関わること、これにはC末端のZFドメインを介してユビキチンに結合することがこれらの機能に関わることを明らかにした。
「mitophagyにおける直鎖状ユビキチン鎖の寄与の解明と疾患、創薬」として下記の研究項目を中心に解析を進める。平成28年度の研究成果をさらに発展させ、①mitophagyにおけるOPTNやNDP52の直鎖状ユビキチン結合能の重要性や神経細胞におけるOPTNの優位性について明確にする。②リン酸化されたユビキチンやアダプタータンパク質の結合変化をX線結晶構造解析によって詳細に解明する。③parkinとLUBACのmitophagy惹起・増強における機能相関を解明する。④mitophagy制御に関わる新規脱ユビキチン化酵素を同定し、その細胞機構を明らかにするとともに、酵素阻害剤のスクリーニングを行い、新たなmitophagy制御剤など、創薬シーズとしての展開に務める。⑤ALSのみならず、パーキンソン病など各種神経変性疾患とユビキチン鎖特異性、mitophagyとの連関を明らかにする。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 3件) 備考 (2件)
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