研究実績の概要 |
小脳皮質のBergmannグリア(BG)は神経伝達の調節や恒常性維持を担う大型放射状グリアである。グルタミン酸作動性シナプスを被覆する菲薄なBG突起の細胞膜直下にはセプチン細胞骨格を構成するサブユニット(SEPT1-14)の多くが集積する。個々のセプチン遺伝子欠損マウスは神経突起形成不全、黒質-線条体ドーパミン神経伝達減弱、内耳低形成などを呈するが、小脳機能障害が顕在化した例はない。一方、CDC42EP4(CDC42およびセプチンと会合する機能未知蛋白質)欠損マウスは小脳機能障害を呈するが、そのメカニズムとして、足場であるセプチンからGLASTが解離することによるグルタミン酸クリアランス効率の低下であることを示した(Nat Commun 2015)。しかし、小脳に高発現するセプチン細胞骨格の局在・組成・機能には不明な点が多いため、グルタミン酸作動性シナプスとBG突起から成るtripartiteシナプスにおける主要サブユニットの分布パターンを、連続切片の免疫電顕画像からの再構築(ssTEM)法にて3Dマッピングした。分析の結果、① SEPT3はニューロン選択的でありグリア内にはない、② SEPT2/4/8/11は シナプス近傍のスパイン頚部を取り巻くBG突起の細胞膜直下に集積する、③ SEPT5/6/7の分布パターンは①②の混合型である、ことがわかった。以上その他の知見から、セプチン細胞骨格の組成は、ニューロンでは5-11-7(+3) or 5-6-7(+3)、BG突起では4-11-7, 4-8-7, 2-11-7, 2-8-7と推測される。
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