公募研究
最終年度である2018年度は、主に(1)フラストレート磁性体におけるスピンネマティック液体相におけるスピンゼーベック効果の実験グループとの共同研究、(2)トポロジカル光波の一種であるベクトルビームの磁性への応用、(3)フロケ理論の環境と結合する古典系への拡張、(4)新しい光誘起スピン流生成法(スピン流版太陽電池)の提案、(5)DC(または低周波数)強電場による磁性体の交換相互作用の制御方法の提案、などの研究に注力した。2018年度内に論文として出版または受理されたのは、(2)(4)の成果であるが、それ以外の成果もすべて論文としてまとめ、現在投稿中であり、研究はほぼ順調に進展したと言える。以下では、特に本研究課題の中心的成果とも呼べる(1)の内容について解説する。LiCuVO4はフラストレートした擬1次元S=1/2強磁性鎖物質群の代表例であり、磁気秩序相が現れる転移温度(2-3K)より高温側で低磁場(~5T)から飽和磁場近傍(~40T)までスピンネマティック液体相が現れることが知られている。この領域では、マグノンがペアを組んでgaplessとなり、一方で単一マグノンはgapを持つ。このマグノンとマグノンペアの混合液体といえるネマティック液体相のスピントロニクス特性を調べる為、LiCuVO4と常磁性金属Ptを接合した系に温度勾配を印加しスピン流を生成するスピンゼーベック効果の実験を行った。その結果、得られるスピンゼーベック電圧が温度磁場の関数として非単調なピークを持つことが分かった。我々は非平衡グリーン関数法に基づいてスピン流を微視的に計算し、このピーク構造がマグノンペアとマグノンの特性によって生じていることを明らかにした。これらの実験と理論は、スピンネマティック液体相がこれまでスピントロニクスで研究されてきた多くの磁気秩序相とは全く異なる新しい輸送特性を持つことを示している。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
パリティ
巻: 34 ページ: 54-57
Physical Review Letters
巻: 122 ページ: 197702-1-6
https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.122.197702
Scientific Reports
巻: 8 ページ: 15738-1,15738-7
https://doi.org/10.1038/s41598-018-33651-0
光学
巻: 第47巻 ページ: 162-164
固体物理
巻: 通巻631号 ページ: 457-471
http://sugar.sci.ibaraki.ac.jp/index.html