公募研究
最終年度はトンネル接合デバイスにおけるトンネル分光に注力した。トンネル分光測定を行うと状態密度を議論できる。具体的には5d元素であるPtをFe/MgO界面に挿入したトンネル接合デバイスを作製した。Pt挿入の効果を明確にするため、Pt膜厚を0原子層から1原子層程度までこまめに変化させた傾斜膜を用いた。トンネル分光測定には自作の微分回路を用いて2次微分コンダクタンスを直接測定した。結果としてFe/Pt/MgOではFe/MgOで観測された量子井戸に加えて、Pt挿入に由来する界面電子状態が存在することがわかった。そしてこの界面電子状態はPtを1原子層挿入したときに最大化されることもわかった。Fe/Pt/MgOトンネル接合ではPtを1原子層挿入したときにスピントルクが最大化されるため、スピントルクの増大は界面電子状態の形成と結びついていることを強く示唆する結果である。第一原理計算からは実験同様にPt挿入により界面電子状態がフェルミ面近傍に生成されることがわかった。さらに透過電子線顕微鏡による構造解析からはPtの1原子層がFe/MgO界面に存在し、実験に用いたデバイスが理論解析に耐えうる品質を有していることが示された。第一原理計算結果を詳細に解析すると、Pt挿入によりPtのみならずFe層にも新たな電子状態が生成されているという驚くべき知見を得た。同様の実験をFe/Bi/MgO接合でも行った。しかしFe/Pt/MgOのような界面電子状態の生成は確認できなかった。これはスピントルクの実験においてFe/Pt/MgOではFe/MgOに対しトルクの増強があったことに対し、Fe/Bi/MgOではFe/MgOとほぼ同様のトルクしか得られなかったことと関係があると考えられる。なお透過電子顕微鏡による構造解析からはFe/Bi/MgOデバイスにおけるBiはFe/MgO界面に存在することを確認しており、PtとBiとで結果が大きく異なったことは5d元素と6p元素の違いを示しており大変興味深い。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 2件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (29件) (うち国際学会 9件、 招待講演 6件) 備考 (1件)
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