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2017 年度 実績報告書

キラル物質を用いた新しい選択則のスピン流・電流変換現象の開拓

公募研究

研究領域ナノスピン変換科学
研究課題/領域番号 17H05186
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

関 真一郎  国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, ユニットリーダー (70598599)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワードスピントロニクス / スピン流 / Edelstein効果 / キラリティ
研究実績の概要

本研究では、Edelstein効果を利用した高効率かつ新しい選択則のスピン・電流変換を実現するための舞台として、キラルな結晶構造を伴う金属・半導体材料の開拓を行っている。こうしたキラルな物質中では、Weyl型と呼ばれる新しい対称性のスピン分裂の発現が予言されており、従来とは異なる選択則のスピン流・電流変換を実現できることが強く期待される。
今年度は、特に最も典型的なキラル半導体であるテルル単結晶に対象を絞って、スピン流・電流変換現象の観測を行った。最初に試したのは、強磁性体との接合系を作成して磁気共鳴を誘起することで、外部からスピン流を注入して変換された電流を検出する手法(スピンポンピング)である。この手法では、外部磁場の方向と検出する電流方向の角度を様々に変えて測定を行うことで、スピン・電流変換の選択則を調べることが可能である。しかし、実際に測定を行った結果、電流は磁場に垂直な方向に誘起されていることが判明し、これはバルク結晶で期待されるWeyl型ではなく、界面に由来したRashba型のスピン分裂の寄与を支配的に観測してしまっていることを意味する。このため、バルクそのもの性質を測定できる方法として、カー回転による電流誘起磁化の検出を試みた。この結果、単結晶テルルに電流を流すと、電流に平行な方向に有限の磁化が誘起されていることが観測され、キラル物質で期待されるWeyl型のスピン分裂とよく一致する対称性のスピン・電流変換現象を実際に観測することに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は、特に最も典型的なキラル半導体であるテルル単結晶に対象を絞って、スピン流・電流変換現象の観測を行った。最初に試したのは、強磁性体との接合系を作成して磁気共鳴を誘起することで、外部からスピン流を注入して変換された電流を検出する手法(スピンポンピング)である。この手法では、外部磁場の方向と検出する電流方向の角度を様々に変えて測定を行うことで、スピン・電流変換の選択則を調べることが可能である。しかし、実際に測定を行った結果、電流は磁場に垂直な方向に誘起されていることが判明し、これはバルク結晶で期待されるWeyl型ではなく、界面に由来したRashba型のスピン分裂の寄与を支配的に観測してしまっていることを意味する。このため、バルクそのものの性質を測定できる方法として、カー回転による電流誘起磁化の検出を試みた。この結果、単結晶テルルに電流を流すと、電流に平行な方向に有限の磁化が誘起されていることが観測され、キラル物質で期待されるWeyl型のスピン分裂とよく一致する対称性のスピン・電流変換現象を実際に観測することに成功した。上記の結果は、当初のねらいであった「新しい選択則のスピン・電流変換」が実際に可能であることを意味しており、他の多くのキラル物質でも同様の振る舞いが観測できることが強く期待できる。

今後の研究の推進方策

今年度の研究で、キラル物質においてWeyl型のスピン分裂に由来した新しい選択則のスピン電流変換が可能であることを明らかに出来た。ただし、現在電流誘起磁化の測定に用いているカー回転は光学的な手法であるため、今後のデバイス応用の可能性を考えると、電気的な手法によってこうしたEdelstein効果を観測できることが望ましい。最近、強磁性電極を系の表面に貼り付けることによって、電流誘起のスピン蓄積を電気的に検出できるという報告が、トポロジカル絶縁体などに対して報告されつつあり、こうした実験手法を用いることで、新しい選択則のスピン・電流変換を電気的にも検出・実証することを目指したい。また、上述の現象はキラル物質一般に観測できることが強く期待され、複数の物質で同様の実験を行うことで、現象の巨大化に向けた指針を見出すことも目指したい。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Low-field bi-skyrmion formation in a noncentrosymmetric chimney ladder ferromagnet2018

    • 著者名/発表者名
      R. Takagi, X. Z. Yu, J. S. White, K. Shibata, Y. Kaneko, G. Tatara, H. M. Ronnow, Y. Tokura, S. Seki
    • 雑誌名

      Physical Review Letters

      巻: 120 ページ: 037203

    • DOI

      10.1103/PhysRevLett.120.037203

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Spin-wave spectroscopy of the Dzyaloshinskii-Moriya interaction in room-temperature chiral magnets hosting skyrmions2017

    • 著者名/発表者名
      R. Takagi, D. Morikawa, K. Karube, N. Kanazawa, K. Shibata, G. Tatara, Y. Tokunaga, T. Arima, Y. Taguchi, Y. Tokura, S. Seki
    • 雑誌名

      Physical Review B

      巻: 95 ページ: 220406

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.95.220406

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Stabilization of magnetic skyrmions by uniaxial tensile strain2017

    • 著者名/発表者名
      S. Seki, Y. Okamura, K. Shibata, R. Takagi, N. D. Khanh, F. Kagawa, T. Arima, Y. Tokura
    • 雑誌名

      Physical Review B

      巻: 96 ページ: 220404

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.96.220404

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Noncentrosymmetric magnets hosting magnetic skyrmions2017

    • 著者名/発表者名
      N. Kanazawa, S. Seki, Y. Tokura
    • 雑誌名

      Advanced Materials

      巻: 29 ページ: 1603227

    • DOI

      10.1002/adma.201603227

    • 査読あり
  • [学会発表] Magnetoelectric Dynamics of Skyrmions2017

    • 著者名/発表者名
      S. Seki
    • 学会等名
      Skyrmionics: Materials, Phenomena and Applications
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 磁気スキルミオン相における非相反なスピン波伝搬特性2017

    • 著者名/発表者名
      関真一郎、岡村嘉大、賀川史敬、十倉好紀
    • 学会等名
      日本物理学会2017年秋季大会

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公開日: 2018-12-17  

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