研究領域 | 高次複合光応答分子システムの開拓と学理の構築 |
研究課題/領域番号 |
17H05244
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
雲林院 宏 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (40519352)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 光強結合 / プラズモン / 光異性化反応 |
研究実績の概要 |
分子・光強結合は量子情報システムや微弱光スイッチングデバイスなどへの応用が期待されている一方で、複雑な設計が要求され、かつ室温での操作が困難である。反面、局在プラズモン共鳴は光エネルギーをnmスケールに閉じ込め、そのスケールで分子と光の相互作用を引き起こすことが可能である。近年、この特性を生かした室温での分子・光強結合の実現を試みる研究が世界的に多くなされている。本研究では、さらに一歩進めて、プラズモン増強多光子励起過程を巧みに利用して、nmスケールで化学反応を制御することで、分子・光強結合をより柔軟に制御することを目指す。本研究では、局在プラズモン共鳴増強を利用して、非線形光学現象である多光子励起異性化反応をナノメートルスケールで制御し、かつそれにより巨視的光応答性制御を実現する新手法を開発することを目的としている。 初年度は、多光子励起異性化反応のナノメートルスケールで制御する手法を検討した。局在化プラズモン共鳴を用いたナノメートル領域での非線形光学現象を利用した光異性化反応の報告はあるが、その機構は明らかではない。すなわち、局在化プラズモンによって発生した第2次高調波発生による異性化反応なのか、多光子励起による異性化反応なのかの区別は明らかになっていない。第2次高調波発生による異性化反応の場合、発生した第2次高調波が散乱してしまうためナノメートル領域のみの反応を誘起することは困難である。すなわちマイルドな条件で多光子励起を引き起こす必要がある。このことが可能かどうかを検証するため、第2次高調波発生が発生し得ない伝搬しているプラズモンを用いた非線形光学光異性化反応誘起の可能を検証した。その結果、光異性化反応は伝搬プラズモンを用いて誘起できたことから、プラズモン増強の多光子励起による光異性化反応は可能であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
局在化プラズモン共鳴を用いたナノメートル領域での非線形光学現象を利用した光異性化反応の報告はあるが、その機構は明らかではない。すなわち、局在化プラズモンによって発生した第2次高調波発生による異性化反応なのか、多光子励起による異性化反応なのかの区別は明らかになっていない。初年度は、第2次高調波発生が発生しない条件である伝搬プラズモンによって光異性化反応誘起の可能性を探った。具体的には、プラズモン導波路である化学合成で作成した直径100ナノメートル、長さ20マイクロメートル程度の銀ナノワイヤーを用い、フェムト秒パルスレーザーをもちいてパルス伝搬プラズモンを発生させた。その導波路付近に分散させた光異性化分子の異性化反応を蛍光顕微鏡を用いて観測したところ、異性化反応は誘起されていることが明らかとなった。すなわち、プラズモンを用いることで多光子励起光異性化反応を誘起することが可能であることを示唆した。伝搬プラズモンの周期に合致する周期で異性化反応が引き起こされていることから、ナノメートルレベルでの反応制御が可能であることも示した。
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今後の研究の推進方策 |
伝搬プラズモンを用いた条件で、多光子励起による光異性化反応誘起が可能であることが示唆されたため、今後はキャビティー条件で多光子励起光異性化反応をナノメートルレベルで誘起し、分子・光強結合をナノメートルスケールで制御できるかを検証する。
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