研究領域 | 高次複合光応答分子システムの開拓と学理の構築 |
研究課題/領域番号 |
17H05255
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
出羽 毅久 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70335082)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 超高速エネルギー移動 / 光合成 / 光収穫系 / 蛍光色素 / 機能拡張 / 分子集合系 / 脂質二分子膜 |
研究実績の概要 |
エネルギー密度の低い太陽光をエネルギー変換系に有効利用するためには、効率の良い光収穫系の構築が必要である。本研究では、光合成系の光収穫系複合体(LH2)に蛍光色素を付加することにより光吸収帯の拡張を行い、蛍光色素からLH2内のバクテリオクロロフィル分子集合団(B800, B850)への超高速エネルギー移動機構を明らかにした。また、脂質二分子膜により形成した分子集合系を用いることにより、より高速かつ高効率なエネルギー移動系の構築に成功した。 (1) 疎水性蛍光色素(ATTO647N)を結合させたLH2による超高速エネルギー移動系の構築:二官能性架橋剤を用いて、ATTO647NをLH2のLys側鎖に結合させた。ミセル溶液系では、2.2 psから30 psでのエネルギー移動速度が観測された(平均17 ps)。ここでは、天然系で見られるB800からB850の超高速エネルギー移動チャネル(700 fs)が関与していることが示唆された。 (2) 脂質二分子膜に導入すると、エネルギー移動速度が著しく増加した(1.5-8.8 ps: 平均6.0 ps)。これは疎水性のATTO647Nが脂質二分子膜中に組み込まれることにより、B800/B850とより近接することが可能になり、超高速なエネルギー移動系に成っていると結論づけられた。 (3) B800側に選択的に蛍光色素(Alexa647)を結合するためのLH2変異体を作成し、LH2内でのB800ーB850の超高速エネギー移動チャネルを有効活用できる系を作成した。B800側にシステインを導入しし蛍光色素(Alexa647)を結合させたバイオハイブリッドLH2を作成した。フェムト秒過渡吸収計測により、B800が媒介する超高速エネルギー移動が起こっていることが明らかとなった。また一部の成分でB850に直接エネルギー移動していることも見いだされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度での当初計画では、LH2変異体を作成し、蛍光色素の結合位置を定めた蛍光色素ーLH2結合体を作成し、LH2内でのB800とB850との役割を明らかにする予定であったが、結合体の調製に手間取った。しかしながら、野生体のLH2を用いた実験が順調に先行したため、初年度はこの野生体LH2を用いた研究課題を推進し、顕著な成果が得られた。 また、2年度に変異体の作成を行い、そのエネルギー移動についても明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1年目の成果をさらに発展させ、光触媒部位である光合成反応中心複合体(LH1-RC)を共存させることにより、光収穫系と効率よく連動する光エネルギー変換系を作成し、機能評価を行う。 2年目の研究では、蛍光色素の結合位置を固定化したLH2変異体(B800サイト近くにシステインを組み込んだもの)を作成し、LH2固有の超高速エネルギー移動チャネル(B800-B850)をより有効に利用する系を作成する。
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