公募研究
凝集にともない発光する、凝集誘起発光(Aggregation-Induced Emission Enhancement:AIEE)の解明は、高次光機能集合系の合理的構築に望ましいが、分子構造とAIEEの一般的な関係はほとんど分かっていない。AIEEが発現している状態では、分子の周辺環境とのシナジー効果により振電相互作用(電子-分子振動相互作用)が小さく無輻射遷移が抑制されていると考えられる。本研究は、振電相互作用における凝集の効果を分子構造との一般的な関係として理解することを目的としている。1-cyano-1,2-bis(pyridylphenyl)ethene (CNBE)における凝集誘起発光(AIEE)の解明を目指し、振電相互作用密度(VCD)解析を行った。AIEEが励起電子状態の擬縮退に起因する内部転換の抑制よることを明らかにした。振電相互作用定数(VCC)の減少により内部転換は抑制される。結晶中のCi対称性により擬縮退しているフロンティア軌道は二分子にわたり非局在化し、VCDも二分子にわたって非局在化する。その空間積分によって与えられるVCCは、一分子で得られたVCCの約1/√2倍となった。すなわち、凝集によって分子が対称性を持つオリゴマーを形成することで、その電子状態は擬縮退し、内部転換が抑制される。また、ビスアントラセン誘導体のVCD解析に基づき、高次三重項状態を利用した有機EL素子の新規な発光機構であるFvHT機構を提案した。これら本研究で得られた知見は有機EL素子等における新規発光材料の合理的分子設計に有用なものである。
2: おおむね順調に進展している
設計指針が得られたので、おおむね順調に進展したと考えている。
得られた設計指針を元に新規のAIEEあるいは類似の現象を発現する系を設計していきたい。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Chem. Phys. Lett.
巻: 715 ページ: 239-243
10.1016/j.cplett.2018.11.036
J. Mater. Chem. C
巻: 7 ページ: 2541-2547
10.1039/c8tc05817b
J. Phys. Conf.
巻: 1148 ページ: 012004 1-13
10.1088/1742-6596/1148/1/012004
Nat. Commun.
巻: 9 ページ: 2314 1-7
10.1038/s41467-018-04630-w
Phys. Rev. B
巻: 98 ページ: 035402 1-9
10.1103/PhysRevB.98.035402
J. Comput. Chem. Jpn.
巻: 17 ページ: 138-141
10.2477/jccj.2018-0033
Chem. Sci.
巻: 9 ページ: 1996-2007
10.1039/c7sc04034b