研究領域 | 高次複合光応答分子システムの開拓と学理の構築 |
研究課題/領域番号 |
17H05271
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
池田 富樹 中央大学, 研究開発機構, 機構教授 (40143656)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 二光子吸収 / 架橋液晶高分子 / フォトクロミック分子 / 光運動材料 / アゾトラン / アクチュエーター |
研究実績の概要 |
架橋液晶高分子はメソゲンの配向と高分子鎖の形態との間に強い相関をもつため,外部刺激によりメソゲンの配向を変化させるとマクロな変形を示す。とくにフォトクロミック部位を導入すると,光照射によって変形を引き起こすことができる。従来の架橋液晶高分子の光駆動は一光子吸収プロセスに基づいていた。二光子吸収プロセスを利用することができれば,三次元的に任意の位置で配向変化を引き起こすことによりマクロ変形の多様化が期待できる。 平成27-28年度の公募研究においては,エネルギー移動を利用した二光子駆動アクチュエーターを開発した。本公募研究においては,二光子駆動アクチュエーターの精密駆動をめざし,駆動メカニズムの探究と新規アクチュエーターの開発を遂行している。 本年度は一成分で二光子駆動が可能なアクチュエーターを開発した。まずZ-スキャン法により,アゾトランが十分な二光子吸収断面積を有することが明らかになった。二光子吸収スペクトルを詳細に評価することにより,最大吸収波長を見出した。さらにアゾトランを有するフィルムにフェムト秒レーザーパルスを照射すると紫外可視吸収スペクトルが変化し,トランス-シス異性化が起こることが分かった。これらの結果から,アゾトランが二光子吸収型フォトクロミック分子として機能することが明らかになった。次に架橋アゾトラン液晶高分子の二光子吸収に伴う変形挙動を評価した。フェムト秒レーザーパルスを照射すると,架橋アゾトラン液晶高分子が屈曲した。レーザーの焦点を変化させることにより,フィルム中の励起部位を三次元的に選択することができ,様々な変形を誘起することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は,二光子駆動メカニズムの探究と新規二光子吸収液晶性クロモフォアの開拓を主題として研究を遂行した。二光子吸収断面積測定により,アゾトランが二光子吸収液晶性クロモフォアであることを見出した。これにより,従来の二成分系ではなく一成分系での二光子駆動アクチュエーター作製が可能になった。またフェムト秒レーザーパルス照射後の紫外可視吸収スペクトル測定により,アゾトランのシス体が生成することを明らかにした。さらに照射レーザーパルスの光強度依存性測定から,フィルムの変形が二光子プロセスによるものであることが分かった。以上の成果は年度当初の目標に達するものであり,研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は二光子吸収アクチュエーターにおける光駆動の可逆性を中心に探究する。アゾトランのシス体について二光子吸収断面積を評価することにより,シス-トランス異性化を引き起こすための照射波長を決定する。この知見に基づき,フェムト秒レーザーパルス照射による異性化挙動と変形挙動を評価する。またこれまでの実験により,高強度の光を長時間照射するとフィルムの変形が不可逆になることが分かっているため,光照射条件について詳細に検討する。また大変形が可能な液晶エラストマーについても設計を行い,二光子駆動を試みる。
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