公募研究
光の照射により蛍光スイッチングを示すジアリールエテン分子と新しい光励起法を用いて、微小領域における構造や物理的・化学的情報を可視化する超解像蛍光顕微鏡法を創出することを目指している。蛍光スイッチングジアリールエテンの蛍光ソルバトクロミズム、および可視光照射によるスイッチングについて検討した。末端に電子供与性のチオフェン環を有する蛍光スイッチングジアリールエテンが、光照射により蛍光性の閉環体を生成し、またその閉環体が溶媒の極性に応答して蛍光色を変化させる蛍光ソルバトクロミズムを示すことを見出した。ヘキサン中では緑色の蛍光を示したのに対して、溶媒の極性が高くなるにつれて蛍光スペクトルは長波長シフトし、四塩化炭素中では黄色、ジクロロメタン中では橙色、ジメチルスルホキシド中では赤色の蛍光を示した。また、様々な溶媒中において0.6~0.8程度の比較的高い蛍光量子収率を示した。ソルバトクロミズムを示す光スイッチ型蛍光分子は、物質・細胞中の微小領域における極性情報の超解像イメージングを行うためのプローブ分子として利用できる可能性がある。蛍光スイッチングジアリールエテン開環体の溶液に対して、開環体の0-0遷移吸収帯よりも長波長の可視光(420 nm < λ < 470 nm)を照射することで、蛍光性の閉環体が生成する現象を見出した。この現象について詳細に検討した結果、可視光領域に存在する開環体のホットバンド(振動励起状態からの光学遷移による低強度の吸収帯)において光励起が起こり、閉環反応が進行することが示唆された。このような可視光領域のホットバンドを利用した光励起法に基づく蛍光スイッチング現象はバイオイメージングにおいて有効と考えられる。
2: おおむね順調に進展している
物質合成や合成した分子の光反応挙動・蛍光特性の測定については、特に問題なく遂行することができた。その結果、チオフェン環などの電子供与性基を末端に有するジアリールエテンが蛍光ソルバトミズムを示すことを見出し、ソルバトクロミズムを示す光スイッチ型蛍光分子の設計指針に関する知見を得ることができた。また、可視光照射による蛍光スイッチング現象を見出し、そのメカニズムを明らかにすることができた。
可視光照射に基づく光励起法を、蛍光ソルバトクロミズムを示すジアリールエテンに適用することで、微小領域における極性情報の超解像イメージングに挑戦する。それに向けて、化学修飾によるジアリールエテンの光応答機能の制御や、ポリマー膜中での極性に応じた蛍光色変化の評価などに取り組む予定である。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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