研究実績の概要 |
本研究で用いたジアリールエテン1(1,2-Bis(2-methoxy-5-trimethylsilylthien-3-yl)perfluorocyclopentene)は、UV光照射により閉環体(1c)へ、可視光照射により開環体(1o)へ光異性化し、1cへの光異性化に伴い針状結晶が成長することが知られている。正倒立顕微鏡を用いたイメージングと分光法にプラズモン共鳴による電場増強法も加えることで、光異性化と結晶成長の関係をin situ観察で明らかにすることを目指した。 プラズモニックチップはUV光の電場増強効果を期待して、UVナノインプリント法によりピッチ300 nmの格子構造のパターンを作製し、Alをコーティングした。そこに1o薄膜をキャスト法により作製した。UV光照射にはキセノンランプ光(UV光)を、観察にはハロゲンランプ光(波長500 nm以上)を用いた。 1o薄膜の膜端部にチップの裏から5分間UV光を照射すると、照射スポット内が黒くなり、可視域の吸光度が増加していることが示された。1oが可視域に吸収ピークを持つ1cに光異性化したためである。格子構造内で特に大きな吸収が見られ、光異性化の促進が示された。UV光照射から2時間後、格子構造内で針状結晶が観測され、その後格子構造内で針状結晶の成長が観察された。格子構造内では、プラズモンにより電場が増強されたことで1cへの光異性化が促進され、その結果1cの針状結晶も成長したと考えられる。特に光異性化率が60%を超えると結晶成長が見られることも示された。
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