研究領域 | ヒッグス粒子発見後の素粒子物理学の新展開~LHCによる真空と時空構造の解明~ |
研究課題/領域番号 |
17H05400
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
柿崎 充 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (90612622)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 素粒子論 / 宇宙論 / 暗黒物質 / ヒッグス粒子 / 余剰次元 |
研究実績の概要 |
本研究では、素粒子物理学の標準理論を超えたパラダイムの有力候補の一つである余剰次元を持った様々な素粒子模型を現象論的に解析すること、及び新しい余剰次元模型を提案することを目的としている。そのため、特徴のある余剰次元模型を取り上げ、予言される様々な物理量を計算し、現在稼働中及び将来の加速器実験と宇宙観測で得られるデータと比較することで、余剰次元模型の検証可能性を調べている。 今年度は主に、ユニバーサル余剰次元模型の現象論的解析を行うことを念頭におき、この模型で種々の物理量を自動的に計算する数値計算コードの開発、改良に取り組んできた。申請者は、予備的研究で、最小ユニバーサル余剰次元模型における暗黒物質候補粒子を特徴付ける物理量の自動計算コードを作成したが、これをより汎用性の高いものにすることに取り組んでいる。改良されたコードを使い、一般的なユニバーサル余剰次元模型の枠組みで第1カルツァ・クライン光子以外のカルツァ・クライン粒子が暗黒物質候補粒子になる場合の物理量の再計算を行った。また、近年特にヒッグス粒子の物理が注目を浴びていることに鑑み、ヒッグスセクターを特徴付ける物理量も同時に計算できるように数値計算コードを修正している。 その他、余剰次元模型の枠組みで実現可能である、U(1)Xゲージ模型の現象論的解析も行った。この模型は、電弱バリオン数生成シナリオに必要な強い1次的電弱相転移を実現し、且つ宇宙の暗黒物質の存在を説明できる可能性のある模型である。申請者らの研究の結果、現在稼働中のラージ・ハドロン・コライダーからヒッグス粒子への制限が非常に厳しくなったため、暗黒物質検出実験からの制限を回避しつつ残存量を説明できる可能性は非常に小さいことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ユニバーサル余剰次元模型に関しては、これまで最小ユニバーサル余剰次元模型等の限られた模型群において暗黒物質候補粒子に関係する物理量のみ計算可能であったが、今年度のコード開発により、より一般的なユニバーサル余剰次元模型において、他の物理量も信頼のおける精度で計算することが可能になり、来年度以降の数値計算コードを使った現象論的解析の下地ができた。また、近年のヒッグス粒子の物理の発展に着目し、ゲージヒッグス統一模型と呼ばれる余剰次元模型の現象論的解析を開始した。このように本研究課題は順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に得られた研究成果を今後さらに発展させていく。ユニバーサル余剰次元模型においては、ヒッグスセクターの解析にも重点をおき、今後の高輝度LHC実験、将来のILC計画を見据えた模型の検証可能性を調べる。また、場の局在化を用いた新物理模型の構築を行い、種々の物理量の予言値を評価し、模型の検証方法を検討する。さらに、ゲージヒッグス統一模型において、ヒッグス粒子の持つ性質、カルツァ・クライン粒子の持つ性質を吟味し、加速器実験等でどの程度模型のパラメータ領域を絞り込めるか調べて行きたい。
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