研究領域 | ヒッグス粒子発見後の素粒子物理学の新展開~LHCによる真空と時空構造の解明~ |
研究課題/領域番号 |
17H05402
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
石渡 弘治 金沢大学, 数物科学系, 助教 (40754271)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 素粒子論 |
研究実績の概要 |
本研究では、現在我々の宇宙が存在する真空構造を解明し、その起源を探ることを目的としている。宇宙の真空構造は、宇宙というマクロな視点と素粒子論的なミクロな視点からの研究が不可欠である。ミクロな視点での最先端である現代素粒子物理は、「素粒子標準理論」を基礎においている。しかしながらこの素粒子標準理論は、宇宙の真空構造について無知である。そこで素粒子標準理論を越えた新しい理論体系を考える必要がある。本研究ではその新しい理論体系として超対称模型に着目し、本年度では特に地上加速器実験において超対称模型を検証する新しい方法についての研究を行った。 超対称模型において最もシンプルな模型では、2012年に発見されたヒッグス粒子と、素粒子標準理論の中で最も質量の大きいトップクォーク、そしてその超対称パートナー粒子であるスカラートップが非常に密接に関わる。具体的には、ヒッグス粒子のポテンシャルを決定する際にトップクォークとスカラートップは大きく影響する。このヒッグス粒子のポテンシャルは現在の宇宙の真空構造を決定するため、ヒッグス粒子の性質を調べることは宇宙の真空構造の解明につながる。そこで本研究では、このヒッグス粒子のポテンシャルの構造を、加速器実験におけるWボソン散乱過程を通じて間接的に観測するという方法を提案した。 着目したのはWボソンの縦波成分である。この縦波成分はヒッグス場の自由度に対応するため、Wボソンの縦波成分同士の散乱過程はすなわち、ヒッグス粒子同士の散乱過程に相当する。このアイディアを超対称模型に適用し、さらにスカラートップの影響について解析的に理解し、かつ数値的に示した。 また、国内研究会:第45回北陸信越地区素粒子論グループ合宿研究会を主宰、国際会議Summer Institute 2018のlocal organizerを務め、国内外の研究者の活発な議論の場を提供した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べた通り、計画段階で想定していた研究成果をほぼ予定通りあげることができている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度提案した手法を用いて、加速器実験における数値シミュレーションを具体的に行い、どのような物理量に着目する必要があるのかを示す。 一方、初期宇宙における真空構造解明のため、インフレーションの研究に着手する。ここでも超対称模型に着目するが、それと同時に、より高いエネルギースケールでの素粒子模型を記述すると期待される超弦理論も念頭に置く。超弦理論、あるいは超弦理論が基礎に置くより高い対称性の存在は一般に検証が難しいとされているが、宇宙分野で観測が進むインフレーションを通じてこれらの検証を可能とする研究の基礎を築く。
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