研究領域 | ヒッグス粒子発見後の素粒子物理学の新展開~LHCによる真空と時空構造の解明~ |
研究課題/領域番号 |
17H05404
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大村 雄司 名古屋大学, 基礎理論研究センター, 准教授 (00772097)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 暗黒物質模型の検証 / 素粒子理論 / フレーバー物理 |
研究実績の概要 |
宇宙の真空構造と暗黒物質(DM)の解明のため、(未知の)弱い相互作用をする暗黒物質模型に焦点を絞り、DM の直接観測と間接観測、LHC 実験での新物理直接探索、フレーバー物理からのDM 模型の検証を行っている。今年度、(1)電弱相互作用するDMと(2)電弱相互作用しないDM(spin 0) に関する研究を下記の通り行なった。 (1)超対称性模型において、Higgs 質量との整合性とLHC実験での実験バウンドを考慮し、存在可能性がある一つのセットアップでDMの宇宙での残存量と直接観測での検出可能性、並びに将来実験での検証可能性を論文(JHEP1711,189(2017))で公表した。そのセットアップは超弦理論との相性もよく、興味深いことに、余剰ヒッグスの物理から検証可能であることも明らかにした。論文では、DM直接観測だけでなく、フレーバー物理、及び将来実験での検証可能性も議論している。 (2) 電弱相互作用しないDM (spin 0)において、余剰クォークや余剰レプトンが存在する場合のLHC実験での制限を数値的に調べ、フレーバー物理とDM 物理の観測量の相関を検証した(JHEP1703,058(2017))。特に、LHCb 実験でB中間子のレプトンを伴う崩壊過程が高精度で測定されるようになり、その観測量におけるDMの検証可能性を議論するとともに、今後期待できるフレーバー観測量への定量的評価を行なった。その結果を論文(PRD96,no.7, 075041(2017))にまとめ、日本物理学会、並びに韓国での国際研究会において、現在の進展状況を報告した。今後、spin 1/2 DM の可能性と上記のDM模型を有効的に導く新物理の理論体系を明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
暗黒物質(DM)模型の分類分けに従い、単純化された模型における解析を進めている。 H29年度の研究計画であった、分類分けとすれぞれのボトムアップ的アプローチによるDM模型の検証 は一部分完了し、LHC実験、暗黒物質、フレーバー物理の解析をDMがspin 0 の場合において終えることができた。 さらには、複雑な模型である超対称性模型において、H29年度の計画通り、LHC実験とDM実験での検証を 数値的に評価することにも成功した。 H30年度の研究計画である、より具体的な模型でのDM模型の検証と真空構造の解析に繋げられる研究成果を得ることができた。本研究に関わる論文を10本完成でき、国内、国際学会をあわせ講演を13回(内、招待講演6回) 行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度において、ボトムアップ的アプローチによるDM模型の分類分けとそれぞれの模型の検証を行なった。特にspin 0 DM模型において解析を終了している。H30年度は、まだ解析が完了していないDMがspin 1/2 の場合も研究を行う。さらには、その単純化されたDM模型の背後にあると期待される模型について調べ、模型の詳細による解析を行う。例えば、フレーバー対称性や大統一理論といった長年発見が期待されている理論体系で、DMの予言を模型の詳細による部分も理解し、得られた結果に基づいて、模型の検証方法を探っていく。さらには、バリオン非対称性、真空構造、パリティーの破れといった他の理論的問題点とDM模型との関係を明らかにし、DM模型の検証を理論面からも行う。
そして、今年度始まるBelle2実験に向けて、フレーバー物理におけるDM模型の検証可能性を分類分けを行なった全ての模型において把握し、定量的に評価する。とくに、素粒子標準模型との不一致が指摘されている、B中間子のレプトンを伴う崩壊過程において、DMが寄与できる可能性を再解析し、Belle2 の結果への展望とDM物理へのBelle2 実験のインパクトを評価する。
国際学会、及び国内学会での発表を計8回予定している。
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