研究領域 | ヒッグス粒子発見後の素粒子物理学の新展開~LHCによる真空と時空構造の解明~ |
研究課題/領域番号 |
17H05408
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
進藤 哲央 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 准教授 (60553039)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ヒッグスセクター / 暗黒物質 / フレーバー物理 |
研究実績の概要 |
複合ヒッグスセクターを導き,ニュートリノ質量やバリオジェネシスなどの諸現象を説明できるUV理論の構築を目指し,過去に行なった研究や,他の研究者が構築した模型を詳細に再点検した。このような模型において,等研究の目的である,フレーバー物理をシステマティックに行うためには,模型のフレーバー構造を決定するために適切な理論的あるいは実験的インプットが必要不可欠であるが,29年度の研究活動においては,この方向の研究に適したインプットを設定することが必ずしも成功したとはいえず,本研究の目的に合致する形のベンチマーク模型構築を完遂できなかった。しかしながら,LHCb実験などで報告されているアノマリーに説明を加えるために必要な新物理模型の特質などについての理解が進んだため,今後の研究活動において,フレーバーベンチマーク模型構築が飛躍的に進むことが期待される。 また,これと並行して,複合ヒッグスセクターを含むようなUV理論のベンチマーク模型としての4DCHM模型に注目し,その加速器現象論に焦点をあてた議論を行なった。この模型では,LHC実験におけるZH生成において,標準模型に比べて生成断面積が有意に大きくなることを確認した。4DCHM模型では,フレーバー構造に関する部分の完成度が高くないため,フレーバー物理の研究に繋げるにはいくつかの模型拡張を行う必要がある。加速器現象論のより深い理解とあわせて,今後の課題としたい。 複合ヒッグスセクターを含むような模型ではないが,暗黒物質の説明を可能とするような模型として,超対称性標準模型の枠組みで,重いヒッグス場が重要な役割を果たすような暗黒物質シナリオを研究し,模型に含まれるCP位相に注目して,模型の検証の可能性を議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フレーバー物理を本格的に研究するための,UV理論に動機付けされた複合ヒッグスセクターを含むベンチマーク模型構築を試みたが,模型のフレーバー構造に含まれる,強いダイナミクス起源の不定性をうまくコントロールする方法が確立できなかったため,本来の研究計画よりはやや遅れる状況となった。 しかし,LHCb実験などで報告されているフレーバー物理のアノマリー現象を説明するために,どのような粒子を標準模型に追加すれば良いかという問題について,理解を深めることができたため,この側面に注目した模型構築を行えば,ベンチマーク模型構築が飛躍的に進むことが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
LHCb実験などで報告されている,レプトンユニバーサリティの破れに注目し,これらを説明するに必要な新しい場を自然に提供するようなUV理論に注目する。このことにより,フレーバー構造の起源と密接に結びつくような新物理学模型のベンチマークシナリオを構築し,そのベンチマークシナリオのもとで様々な現象論研究を行っていく。特に,レプトクォークを含むような模型に注目する。アノマリーを説明するために導入されるレプトクォークが,複合ヒッグス模型起源なのか,大統一理論起源なのかによって,各種現象論に違いが生じると期待されるため,このような観点からフレーバー物理をてことして,背後にあるUV理論の姿に迫るという本研究課題の目的に向けて研究活動を行っていく。
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