公募研究
2019度はエチニル基を導入したキラル型ユウロピウム配位高分子の配位結合部位を変化させることによる相転移挙動(ソフトクリスタル機能)の発光機能に関する検討を行った。キラル配位子カンファーを含むユウロピウム錯体を連結するため、エチニル基を含むオルト、メタ、およびパラ置換型ホスフィンオキシドを合成した。得られたユウロピウム配位高分子の相転移挙動をDSCおよびTG-DTAによって計測したところ、オルト連結とメタ連結のユウロピウム配位高分子は相転移挙動(ガラス転移)を示すのに対し、パラ連結のユウロピウム配位高分子は相転移挙動を示さないことがわかった。これらの発光特性と配位連結構造には強い相関があり、オルト連結のユウロピウム配位高分子は長い発光寿命と強い円偏光発光を示すことが明らかになった。このオルト連結のユウロピウム配位高分子の粉体状態とガラス状態における円偏光発光測定では、相変化と円偏光異方性因子には強い相関があることが明らかになった。さらに、連結配位子にキラルを導入する試みとして、その前段階となるキラル型ホスフィンオキシドを用いたユウロピウム錯体の合成および円偏光発光特性を検討した。その検討の結果、キラル型ホスフィンオキシドの分子構造変化に伴ってユウロピウムに配位したジケトナト配位子の構造歪みが生じ、その構造歪みがユウロピウム錯体のLMCTエネルギー状態に変化を与えることがわかった。このLMCTエネルギー状態と円偏光発光特性には強い相関があルことを初めて明らかにした。以上、キラル構造を有する希土類配位化合物の構造相転移と円偏光発光特性を相関を見いだすことに成功した。本知見はソフトクリスタル挙動と円偏光機能との相関を明らかにした初めての研究成果であり、ソフトクリスタル挙動の光機能解明に大きく貢献した。
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