[Pt(CN)4]2-は、白金原子間相互作用により溶液中でゆるい会合体を形成する。さらに、励起状態では白金間に強固な共有結合が形成し、会合度に応じた様々な波長の発光を示すことが知られている。K2[Pt(CN)4]水溶液中の白金錯体会合体を340 nmの長短パルスを用いて選択的に励起し、フェムトからピコ秒領域の時間分解吸収・発光スペクトルを観測した。時間分解発光では、それぞれ励起4量体と5量体に帰属される410 nm と450 nmの蛍光帯が、それぞれ0.1 nsと0.44 nsで減衰するのが観測され、その後長寿命の弱い燐光が残った。紫外部に、蛍光寿命と同程度(0.08 nsと0.4 ns)の時定数で減衰する吸収成分が観測された。これらの吸収スペクトルの時間変化には、振動数130cm-1と70cm-1で振動する吸収強度の変調成分が乗っていた。これらは、それぞれ励起1重項状態における4量体と5量体内で、光励起により生じた白金原子間結合形成に伴うPt-Pt結合の伸縮運動に帰属される。 希土類錯体[Eu(pda)2] (pda = フェナントロリンジカルボン酸)は、水溶液中にアルギニンやヒスチジンといったキラルなアミノ酸が共存すると円偏光異方性glum = 0.09程度の強い円偏光発光(CPL)を示す。顕微分光システムを用いて寒天中に[Eu(pda)2]-とDLアミノ酸を分散させ、円偏光強度の空間分解測定を行い、キラル分布とCPL信号の関係を調べた。D体とL体の境界領域では、アルギニンに比べてヒスチジンのCPL強度が低く、これはD体とL体のヒスチジンが境界領域で拡散により混合し、CPLを示さないヘテロ会合体の生成したことを反映している。
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