公募研究
これまでに我々は、ピラー[5]アレーン結晶を直鎖炭化水素蒸気に晒すと、空孔内に直鎖炭化水素が取り込まれ結晶構造転移が生じ、100%の効率で直鎖炭化水素蒸気を補足することを見出した。さらにピラー[5]アレーンの分子構造にベンゾキノン骨格を導入することで、直鎖炭化水素蒸気の取り込みを電荷移動錯体由来の色変化から検知できるソフトクリスタルの合成に成功した。本研究ではピラーアレーンをベースにした新規ソフトクリスタル結晶が高分子をどのように取り込むか、また結晶に取り込まれたゲストがどのような運動性を示すかを調査した。ピラー[5]アレーン結晶内へのゲスト分子の取り込み・放出・運動性 ピラー[5]アレーンの結晶構造とゲスト分子の取り込み・放出・運動性についての相関を調査した。その結果、ヘリングボーン構造を有するピラー[5]アレーン結晶よりもヘリングボーン構造を有するピラー[5]アレーン結晶の方が、低ゲスト分子圧で取り込み、安定に貯蔵できることが分かった。また、チャンネル構造を有する結晶中のゲスト分子のほうが、ヘリングボーン構造を有する結晶中のゲスト分子よりも高い運動性を有していることを見出した。ピラー[5]アレーン結晶の高分子の取り込み 溶融した高分子であるポリエチレンオキシドにピラー[5]アレーン結晶を浸漬させると、ポリエチレンオキシドがピラー[5]アレーン結晶内に取り込まれ、ポリ擬ロタキサン構造を形成することが分かった。興味深いことに、ピラー[5]アレーン結晶は、様々な高分子量体のポリエチレンオキシドの中から、高分子量体のポリエチレンオキシドを選択的に取り込むことを見出した。
1: 当初の計画以上に進展している
当初は予期していなかったピラーアレーンソフトクリスタル内での炭化水素アルカンゲストの運動性を見出すことができた。またピラーアレーン結晶は分子量、高分子の末端をも見分けて選択的に取り込むことを見出した。これより本研究課題は当初の計画以上に進展しているといえる。
1)キラルな炭化水素蒸気をセンシングできるピラーアレーンソフトクリスタルの開発を行う。ピラーアレーンの側鎖に不斉炭素中心を導入すると、ピラーアレーンの面性不斉が偏ることが分かっている。色変化を示すユニットを導入し、キラルな炭化水素蒸気のセンシングを試みる。2)炭化水素蒸気を明瞭な蛍光変化でセンシングできるピラーアレーンソフトクリスタルの開発を行う。電子吸引性のπ共役ユニットを直接連結することで、蛍光発光色が劇的に変化するソフトクリスタルの開発を行う。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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