研究領域 | ソフトクリスタル:高秩序で柔軟な応答系の学理と光機能 |
研究課題/領域番号 |
18H04514
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
尾崎 雅則 大阪大学, 工学研究科, 教授 (50204186)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ソフトクリスタル / フタロシアニン / 結晶多形 / 接種凍結 |
研究実績の概要 |
液晶と結晶のさらに中間的な状態である「ソフトクリスタル」の概念を導入し、液晶の柔軟さと運動性を担保したまま「結晶化」することにより、オングストロームオーダーの精緻な配向・配列秩序と、自己組織化によるメートルオーダーの分子配列秩序を両立した「ソフトクリスタル」の実現を目指して、液晶生フタロシアニン同族体を用いて下記の成果を得た。(1)種結晶を用いて接種凍結を施すことでC6TBTAPH2配向薄膜を作製し,薄膜の光学特性及び結晶構造を調べた.その結果、C6TBTAPH2もしくはC6PcH2の種結晶を用いてC6TBTAPH2薄膜に接種凍結を施すことで,種結晶を起点としたエピタキシャル成長が生じ,それに伴って異なる結晶構造の薄膜を選択的に作製することに成功した.また,エピタキシャル成長を利用した結晶多形制御が,キャリア移動度の向上に有効であることを明らかにした.(2)Time of Flight法、Photo-CELIV法に加えて、金属/絶縁体/半導体構造の素子を用いるMIS-CELIV法により、CnPcH2薄膜中の両極性キャリア移動度評価を行い、キャリア輸送について検討した。その結果、CnPcH2薄膜中の正孔移動度および電子移動度は置換基長の増加に伴い単調に減少した。このことは、スピンコート薄膜中ではカラム軸が基板に平行であることから正孔はカラム間をホッピング伝導しており、カラム間隔の増大に伴うホッピング距離の増加により移動度が減少したと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初研究計画として、(1)分子配列秩序ならびに運動性の評価、(2)キャリア伝導機構の評価、(3)溶媒蒸気処理による結晶構造転移と分子配列機構の解明を予定していたが、(1)に関しては、接種凍結による配向薄膜の作製において、昨年度確立したバーコート成膜時の種結晶使用の手法を応用し、種結晶による選択的薄膜の構造制御を実現できた。特に、想定外の成果として、ホモエピタキシャル成長が実現できた。(2)に関しては、移動度評価手法として、Time of Flight法、Photo-CELIV法に加えてMIS-CELIV法を確立でき、大きな進展が得られた。(3)に関しては、溶媒媒介転移の機構解明を目指してサンドイッチセルの溶媒時期処理の予備的実験を進めており、次年度での成果が期待できる。以上のように、当初計画に沿って、順調に研究が進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
領域内共同研究を積極的に進展させる。特に、理論研究者との議論により結晶構造選択性などに関する知見を研究計画にフィードバックする。
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