研究領域 | ソフトクリスタル:高秩序で柔軟な応答系の学理と光機能 |
研究課題/領域番号 |
18H04524
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
池田 富樹 中央大学, 研究開発機構, 機構教授 (40143656)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 1.高分子ソフトクリスタル / 2.結晶性高分子 / 3.ナノ相分離 / 4.フォトクロミズム / 5.フォトメカニカル効果 / 6.光運動材料 / 7.アゾベンゼン |
研究実績の概要 |
高秩序で柔軟な応答を示すソフトクリスタルは低刺激応答型機能材料として高い潜在能力を有する。このソフトクリスタルを実用性の高い材料として開拓するため,複雑な3次元構造体へと成形できる高分子ソフトクリスタルを提案する。高分子固体においては結晶領域と非晶領域が共存し,安定した相分離構造を形成することが可能である。これらの特性を活かし,柔軟な主鎖部位と結晶性側鎖部位から成るナノ相分離型ソフトクリスタルを創製する。 本年度は,側鎖にアゾベンゼンを有する2種類のリニアポリマー(メタクリレートポリマーとアクリレートポリマー)を合成し,その構造と機能を評価した。示差操作熱量測定(DSC)の結果,これらのポリマーが1次相転移を示すことが分かった。また透過型電子顕微鏡(TEM)によりナノ相分離構造が観察できた。ポリマーを溶融延伸することにより,配向異方性を有するファイバーを作製した。メタクリレート高分子ファイバーに紫外光を照射すると,光源から離れる向きに屈曲した。これは初期状態においてアゾベンゼンがホメオトロピック配向を示し,トランス-シス異性化に伴う配向変化および分子鎖形態変化によりファイバー表面が膨張するためであると推察している。続いて可視光を照射すると元の形状に復元した。側鎖部位における物理架橋によりアゾベンゼンの初期配向および材料の初期形状が記憶され,シス-トランス異性化に伴う形状復元が可能になると考えている。一方,アクリレート高分子ファイバーは1回目の紫外光照射において光源に向かって屈曲した。その後可視光を照射すると,ファイバーはさらに光源に向かって屈曲した。2回目以降の光照射においては,メタクリレート高分子ファイバーと同様の屈曲挙動を示した。以上の観察結果から,物理架橋の組替えに伴う初期配向の再記憶が起こると予想しており,今後詳細に構造評価を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は,ナノ相分離型高分子ソフトクリスタルの創成とその光応答性の検証を主題として研究を遂行した。長鎖アルキルを有するアゾベンゼンを側鎖に組み込むことにより,ナノ相分離構造を示すリニアポリマーが得られた。このポリマーはファイバーおよびフィルムに成形可能であり,紫外光・可視光照射によりマクロな屈曲を示すことが明らかになった。以上の成果は年度当初の目標に達するものであり,研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は光照射に伴う高分子ソフトクリスタルの構造変化を詳細に解析する。特にナノ相分離構造に依拠したラメラ構造の変化を追求する。また側鎖部位のアルキル鎖長や機能部位の構造を変化させることにより,ソフトクリスタル構造の形成条件を探究する。さらに高分子ソフトクリスタルを様々な3次元構造体へ成形する手法を確立する。
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